バイデン氏のG7欠席は本当にあるのか?米債務上限問題のポイントを解説
■デフォルトすると何が起こるのか
バイデン大統領は、債務上限問題は「世界にとっての問題だ」と指摘しているが、実際にデフォルトに陥ると何が起きるのか。 ホワイトハウスは5月初旬に、デフォルトの影響について専門家の分析を公表した。ムーディーズの分析を引用し「短期間のデフォルトでも、実質GDPが減少し、200万人近い雇用が失われ、失業率が5%近くまで上昇する」とした他、「デフォルトが長期化した場合、大不況並みの景気後退が起こる」などと警告している。また、アメリカの国債の格付けが下がることになれば、銀行破綻が相次ぐ中、国債を保有するアメリカの銀行経営がさらに悪化するリスクもある。国際金融市場の混乱や、新興・途上国からの資本流出を招く恐れも指摘されている。 一方、住宅ローンやクレジットカードなどの金利の上昇は、家計にも打撃を与える。さらに政府職員の給与や社会保障給付、メディケア(医療保険)の支払いや軍人年金など、人々が受け取る給付が滞るリスクもあり、国民生活にも大きな影響が出かねない。 アメリカの信頼低下は外交にもマイナスだ。ホワイトハウスのカービー戦略調整官は12日「アメリカは世界の平和と安全のための、安定したリーダーではない、と言いたくて仕方がないロシアや中国などに、間違ったメッセージを送ることになる」と警鐘を鳴らした。
■なぜ、交渉がここまで膠着状態になっているのか
今回、バイデン政権と共和党の交渉が膠着しているのにはふたつの理由がある。 ひとつめは、議会で野党・共和党が下院の多数派を握る「ねじれ」状態になっていること。債務上限引き上げには共和党の協力が不可欠になるが、近年党派対立がますます深まる中、そもそも債務上限に限らず、超党派での合意形成は難しい。さらに専門家は「債務上限の問題は、双方とも、先に譲歩しても得るメリットはない」と指摘する。 そしてもうひとつは、バイデン大統領と、共和党の交渉の先頭に立つマッカーシー下院議長が、共に党内基盤に不安を抱えている点だ。 バイデン大統領は4月末に来年の大統領選挙への再出馬を正式表明したばかりだが、直後のワシントンポストなどの世論調査で支持率が過去最低を更新し、トランプ前大統領との対決を想定した設問でも支持率で後れを取った。逆風の中で、安易な妥協をすれば、党内から批判の声が顕在化する恐れもある。 対するマッカーシー議長も求心力不足が指摘される。1月の議長選挙では15回の投票の末にようやく議長に選出されたが、その際に、共和党の保守強硬派から支持を得るために「大幅な歳出削減とセットでなければ、債務上限引き上げを認めない」と約束したと報じられている。下院での共和党の議席数は、過半数(218議席)をわずかに上回る222議席。こちらも今後の党内運営を考えれば、そう簡単に妥協はできない状況だ。 こうした中、両者が折り合わない場合の「奇策」も取りざたされてる。たとえば、財務長官の記念通貨発行権を使って、「1兆ドルのコイン」を発行し、政府の資産額を増やすという案。さらに、「公的債務の効力が問われてはならない」というアメリカ憲法修正14条を用いて「政府は議会の合意がなくても、債務の支払いを続けられる」と解釈するという案も取りざたされている。ただ、バイデン政権高官やFRB=連邦準備制度理事会の幹部は、いずれの案にも否定的な反応を示している。