【少数与党で新たな日本政治を】連立ではない政策協議が生み出すもの、総選挙が可能にした政治実験を成功させよ
少数与党で生まれる議論
2点目は、仮にフルの連立で当面の過半数を確保しない場合でも、今回の衆議院の議席配分においてはリアリズムの政党が圧倒的ということがある。仮に、安全保障や経済政策で、全く異なる立場の政党が拮抗しつつ、誰も過半数を取れないといった場合は、確かに日本の政治は不安定になるであろう。 けれども、自公に国民民主、維新の会、そして野田佳彦氏率いる立憲民主、ここまでのグループに関しては、多くの政策において差があるといっても、是々非々で合意が可能な範囲である。仮に少数内閣が成立してしまい、個々の政策においては、その都度過半数の合意を取り付ける交渉が必要となっても、非現実的なイデオロギー論争に終始することは少なそうだ。 ということは、これまでは自民党の党内組織や自公の党首会談で決まっていた政策が、もっと多様な政党が参加する中でオープンに議論される可能性が出てきた。その一方で、現在の参院の勢力分野としては自公が過半数を持っているという「ねじれ」の問題もある。だが、参院の多数を握っているとはいえ、衆院では少数与党になるということは、野党の意見を聞かねば政策は進まない。 議院内閣制を採用した国としては、かなり珍しいケースとなるが、この際、少数与党という体制を実験的に進めてはどうかと思う。例えば「103万円の壁」にしても、もちろん決して小さくない財源は必要だ。その場合に、投資に見合う消費活性化、少子化の好転、現役世代の活力向上による生産性向上など、リターンが取れるかどうかは、ファクトだけでなく政治思想や経済思想がなくては判断ができない。また世論を説得するコミュニケーション能力も必要だ。
そうした賛成反対の論戦に加えて、実行が可能かどうかの統治能力の問題も、少数与党であれば野党との切磋琢磨となっていく。例えば、本稿の時点では自民党執行部は、国民民主の政策を「ほぼ丸呑み」する姿勢という報道がある。仮にそうであれば、小が大を呑むような政治力学が生まれ、そうなれば7月の参院選にも影響が出るであろう。 その場合は、自民党の命運が本当に尽きるかもしれない。切磋琢磨の迫力を欠き、丸呑みに走るようでは国民の付託に応えることはできないからだ。