高齢者“冬場の入浴”で事故多発、死者数は交通事故の2倍以上…もしもの場合、同居する「家族」に法的責任は発生する?
寒い冬が続く。気象庁によると、特に12月28日から1月3日にかけては、全国的に気温がかなり低くなる可能性があるといい、「風呂に入って温まりたい」と考えるタイミングも増えるのではないだろうか。 高齢者の溺水事故を防ぐためのポイントとは? ただ、高齢者の場合、この時期の入浴は死に至る可能性があり、注意が必要だという。
救急搬送後、約9割は重症以上と診断
厚労省の「人口動態調査」や、消費者庁の資料などによると、2022年に不慮の事故で亡くなった高齢者のうち、交通事故で亡くなったのは2154人。その倍以上の5824人が、家や居住施設の浴槽で溺れ、亡くなっているという。 さらに、東京消防庁の救急搬送データ(2021年)を見ると、冬場は「溺れる」事故により救急搬送される人数が多くなっている。 「溺れる」事故の発生現場の9割以上は「住宅等居住場所」で、多くが浴槽で溺れており、救急搬送された高齢者の約9割は、生命の危険がある重症以上(うち約半数は死亡)と診断されたとのことだ。
寒暖差などで急激に血圧変動
消費者庁は、冬場にこうした事故が増える原因について、HP上で次のように解説している。 「温かい室内と寒い脱衣所や浴室との寒暖差などによる急激な血圧の変動や、熱い湯に長くつかることによる体温上昇での意識障害があげられます」 また、政府広報オンラインも、その理由について以下のように記載している。 「特に65歳以上の高齢者は、血圧を正常に保つ機能も衰えてきている場合がありますので注意してください。また、血圧が不安定なかた、風呂場でめまいや立ちくらみを起こしたことのあるかたも注意が必要です」
目安は「41度以下で10分まで」
では、どのようにすれば、高齢者による溺死・溺水事故を防ぐことができるのだろうか。 消費者庁や政府広報オンラインでは、高齢者本人や、同居人に向けて、下記の注意すべきポイントを挙げている。 ・前もって脱衣所や浴室を暖めておく ・温度計やタイマーを活用し、部屋間の温度差や湯音、入浴時間を見える化する(目安は湯温41度以下、湯につかる時間は10分まで) ・入浴前後に水分補給をする(入浴中も、喉が渇いたらこまめに水分をとる) ・食後、飲酒後、医薬品の服用後の入浴を避ける ・同居者がいる場合は、同居者に一声掛けてから入浴する ・浴槽から急に立ち上がらない ・意識がもうろうとしたら、気を失う前に湯を抜く ・高齢者が入浴中の場合、同居人は様子を確認する 年末年始は特に、家族との会食や飲酒をする機会も多いだろう。しかし、飲食や飲酒は血圧を下げる要因となるので、入浴に際しては注意が必要だ。