築100年の古民家をきれいに整えたら、まさかの「片付けてほしくなかった」 「売れっこない」と決めつけない 難物件の再生を請け負い続けて分かった驚きのニーズ
「コンセプトは町の“共有地”。カフェやゲストハウスを備え、都会と町をつなぐ箕輪の入り口にしたい」―。 長野県上伊那郡箕輪町の築約120年の空き家で、大工や建築士ら有志の手で進行中のDIYプロジェクトがある。再生中の家は「まちの共有地&Cafe Camon(カモン)」と名付け、来春オープン予定だ。子どもたちが宿題をしたり、お年寄りがおしゃべりしたりと、皆が集える場を目指している。
故郷に増えた空き家や空き店舗に衝撃
中心となっているのが、町地域おこし協力隊の柴田恵樹(けいき)さん(40)だ。今年1月にこの空き家を所有者から買い受け、改修に着手。地元の中学生たちが授業の一環で庭のブランコ作りをするなど、これまで延べ100人以上がDIYに関わってきた。
柴田さんは岐阜県中津川市出身。土木コンサルタント会社勤務や飲食業などを経て、2022年協力隊員に着任した。 空き家再生に取り組むきっかけが17年、十数年ぶりに中津川市に帰郷した際に目にした光景だ。「町じゅうに空き家や空き店舗が増えていて衝撃を受けた」
「空き家を何とかしたい」と同年、不動産関係の仕事などに就く小中学校の元同級生4人で「空き家再生隊」を結成。岐阜県内や木曽谷を中心に、築年数が古い、家財道具が多く残されている―などさまざまな事情から市場に流通しづらい空き家についても、所有者の意向を聞き取り、SNSで発信しながら一緒に譲渡先を探すなどしてきた。
岐阜県内の築100年ほどの古民家を、柴田さんら再生隊が掃除して壁を塗り直し、きれいに整えた状態で利用者を募った時のことだ。内覧に訪れた絵本作家が「片付けてほしくなかったのに…」とつぶやいた。
戦前の農具や生活道具、壁の下に貼られた古い新聞紙―。古民家を片付けていると、昔の物が出てくることがよくある。通常はリフォーム済みの建物の方が市場価値が高いが、「その人は、そのままの状態で家の歴史や物語を感じたかったと言うんですね…。(たくさんの物件を手がけるうちに)自分が想像していた以上に、DIYや片付けで自ら煤(すす)をかぶるのをいとわない人が多いと分かった」と柴田さん。