公共トイレで進むIoT化の効果、「安全」「きれい」「健康維持」
商業施設AIで清掃指示、詰まり検知で給水停止
非住宅向けトイレのIoT(モノのインターネット)化が進んでいる。労働人口が減少し、ビルや商業施設、駅などの公共トイレを維持管理する清掃員が不足。メーカーはトイレの利用状況を収集し、清掃業務を補助するデータの提供や効率的な清掃計画の提案を行う月額制サービスを始めた。製品の開発・販売だけでなく、コンサルティング業務まで手がけて顧客とのつながりを維持することで、より要望に沿った製品の開発やサポートを行い、顧客の新規獲得や顧客離れ防止を図る。(田中薫) 【写真】パナソニックの「排泄センサー」 施主にとって、清潔でトラブルがないトイレは物件の価値向上につながる。一方で、維持管理するビルメンテナンス会社や清掃会社は複数の現場を掛け持つ場合も多く、単純にトイレの清掃回数を増やすことは難しい。1日の清掃頻度は物件によって異なるが、オフィスビルでは全体清掃と特定の時間に行う巡回清掃を1回ずつ、商業施設は巡回清掃を5―7回程度行うことが多い。大型の商業施設や駅、サービスエリアなどで複数の場所に離れてトイレが設置されている場合、トイレットペーパーや水石けんの不足、機器の不具合、大便器の詰まりなどのトラブルを即時把握、対応することは困難だ。 そこで、LIXILはIoTサービス「LIXILトイレクラウド」を展開する。個室扉に取り付けたセンサーや、IoT対応させた大便器・小便器・洗面カウンターから利用回数や時間、異常、水石けんの残量などの利用状況を取得し、自社開発した人工知能(AI)を用いて効率的な清掃計画を即時設計し、清掃員に指示を出す。管理画面から、温水・便座温度の一括管理も行える。同社のオフィスビルで行った実証実験では、清掃品質を維持したまま、工数を約半減させた。 同サービスで特徴的なのは大便器でつまりなどの異常を検知した際に、清掃員に通知するだけでなく、器具自体が給水を停止し汚水があふれ出ることを防ぐ点。便器の設計部門と機能部の開発部門が連携して開発した。LIXILトイレクラウド担当の小川祥司氏は「トイレを作るだけでなく、顧客の課題に寄り添って解決し続けていきたい」と話す。 TOTOは「パブリックレストルーム設備管理サポートシステム」を展開。温水洗浄便座「ウォシュレット」、ハンドドライヤー、小便器、自動水栓などの使用データが中継器を介してクラウドに送られ、利用状況の確認や一括管理ができる。データを月に一度まとめ、営業やIoT推進部の意見を交えた上で清掃方法の提案を行う。 長時間の利用や石けんの補充、故障などのほか、いたずらにより便座の温度が変更された際などに管理者や清掃員にメールで通知する。電気的な異常が発生した際は、管理者だけでなくTOTOメンテナンス(東京都港区)にも通知が届き、即時修理を依頼できる。 また2021年ごろから販売している標準品の製品は、後から一部モジュールを追加することで同サービスの利用が可能。他社サービスを利用するために、器具自体を取り替えられてしまうことを防ぐ狙いもある。