新型コロナ 開催中止/下 智弁学園 成長の証し夏へ期待 /奈良
<センバツ2020> 智弁学園の選手は取材でグラウンドを訪れる度、必ず大きな声で「こんにちは」とあいさつしてくれた。2日からの休校が決まって以降は、感染防止のため遠くから練習を見ることしかできなくなったが、「日本一」を目指す熱気は伝わってきた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 開催中止が決まった11日、井元康勝部長は選手だけでなく、教え子でもあった小坂将商監督の心情もおもんぱかった。その小坂監督は「子供たちにどう伝えようか……」と言葉を探していた。12日朝、2人は手塚彰校長と共に「次の目標に向けて頑張ろう」と選手たちに話したという。 当初の予定では5日に壮行会を行い、保護者らがチームの健闘を願って用意したタペストリーや千羽鶴も贈呈するはずだった。タペストリーは「全国制覇」の文字と選手全員の名前が記され、2月中に完成していた。保護者会の山崎剛会長(46)は「子供たちはまだ甲子園で校歌を歌っていない。無観客でも試合をさせてやりかった」。 大舞台で選手たちを鼓舞する吹奏楽部は、今回も中高一貫校の中学生を動員し、総勢48人でオリジナル応援曲を熱演するはずだった。同部顧問の木山竜志教諭は「吹奏楽部も気持ちを切り替えて頑張っていこうと部員たちに声を掛けたい」。 野球部は中止の決定以降、自主練習に取り組んでいる。学校は選手をそれぞれ実家に返すことも検討したが、部員のほとんどが校内のグラウンド横にある寮で生活しており、部外者を入れない寮とグラウンドにいる方が感染予防の点から安全と判断したという。 休校措置が出る前、多くの選手が、2019年夏の甲子園について「観客席の迫力に圧倒された」と語り、「今度は雰囲気にのまれない」と誓っていた。そのために冬の間、一人一人が「体重を増やす」「守備練習を徹底する」「気持ちで負けない」など目標を定め、練習に打ち込んでいた。何とか気持ちを切り替えて、夏の大舞台で成長の証しを見せてほしい。【萱原健一】