ガザ出身医師が訴える「教育」とネタニヤフ政権への「国際的制裁」の必要性
世界に「女性リーダー」を輩出すべく財団を設立
アブラエーシュ博士は映画やインタビューを通じて、教育の重要性を一貫して強く訴えています。特に力を入れているのが女子の高等教育。博士は「男性指導者が支配する世界が戦争を引き起こしている」とし、女性リーダーを意思決定層に増やすことで、世界の安定を図ることができると確信しています。「私たちの世界には、リスクを取り、忍耐力があり、レジリアントで、勤勉で勇敢なリーダーが必要です。(産婦人科医として、)私は常に女性の妊娠、出産、育児を乗り越える強さを目の当たりにしてきました。女性には、このようなリーダーの素質が生来備わっていると信じています。」 この信念に基づき、博士は2010年に亡くなった娘たちを追悼し、「Daughters for Life」財団を設立しました。この財団は中東の女子高等教育を支援することを目的とし、経済的に困難な状況にある中東の女子学生に対し、宗教や人種にかかわらずフェローシップや奨学金を提供しています。財団のアカデミックパートナーには、欧米のトップスクールが名を連ね、博士はさらに日本の企業、学校、自治体ともパートナーシップを結び、留学生の受け入れなどの取り組みを進めていきたいとしています。 ■家族の転換点:「Zero to Hero」と称された息子の進学 アブラエーシュ博士にとって、2015年6月15日は家族の転換点となった日だと言います。30分にわたるインタビューで、中東の現状や政治について力強く語っていた博士が、唯一涙を浮かべた瞬間。それは、「初めて幸福が家に訪れた」と感じた日を振り返った時でした。 その日は、息子の大学進学を祝う場を設けた日。息子の1人が国際バカロレアで高得点を獲得し、高校を卒業することが決まり、卒業式で先生が「この子は、Zero to Heroになった」と生徒たちに語った時、博士は胸がいっぱいになったと言います。ガザでの厳しい状況を乗り越え、カナダに渡り、高成績で卒業した息子の努力を称えたその言葉は、家族にとって大きな意味を持つものでした。 その後、友人を招いて自宅で門出を祝うパーティーを開いたのが6月15日。優秀で勤勉な子どもたちに対し、博士がどのような言葉をかけ、育児を続けたのか尋ねると、数秒間考えた後、こう答えてくれました。「カナダにシングルペアレントとして子どもたちと到着したその日、私は全員を一部屋に集めてこう言いました。『我々には失敗は許されない。加害者は私たち家族が失敗し、苦しむことを望んでいる。だから、何が何でも成功しなければならない。家族とパレスチナの人々ために』」。