夏は涼しかったのに…。7月は38度、冬は氷点下40度、内モンゴル草原の変化
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
今まで、12回にわたって内モンゴルの遊牧文化や遊牧民の日常生活や環境問題などを紹介してきた。そのほとんどはシリンゴル盟に拠点を置きながら撮影してきた。風景も美しく、その名は全国に知られている。そして、その政治的、経済的中心地にあるのがシリンホト市だ。 シリンホト市は年間の温度差がとても大きく、80度近くもある。 冬はマイナス40度を超える厳冬になり、雪もよく降っていた。雪がよく降るおかげで春になると雪解け水で草原が潤い、草がよく育つ。近年、温暖化の影響で降雪量は年々少なくなり、春の雪解け水がなく、少し風が吹くとたちまち砂嵐に覆われるようになってきた。また、冬は石炭を使ったセントラルヒーティングを利用するため、町は連日スモークに覆われる。 一方で、夏は猛暑が続くようになった。7月は38度以上の猛暑日が続き、熱帯夜も珍しくない。 もともと冬は寒く、夏は涼しい草原の町だったが、今は一変して、冬は暖冬で雪が降らなくなり、夏は干ばつが続き、雨量が極端に少なくなっている。草原では温暖化と環境破壊の影響で異常気象が著しく現れるようになっている。(つづく) ※この記事は「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第13回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。