電気自動車になったマカンは、ポルシェらしさを失ってないか【試乗レポート】
初代のデビューは2013年、およそ11年間フルモデルチェンジすることなく販売されてきたポルシェマカン。2代目はブランド初の電気自動車(BEV)、タイカンに続く第2弾としてBEV専用モデルへと生まれ変わった。果たしてBEVになっても、ポルシェらしさは失われていないのか。新型のポイントをジャーナリストの藤野太一がフランスからリポート。 【写真13点】電気自動車になったポルシェマカン
2030年までに新車販売の80%をBEVへ
2024年4月下旬、フランス・ニースから少し南下したリゾート地、アンティーブで新型マカンの国際試乗会が行われた。実はフランスでは新車販売におけるBEVの割合が15%超、PHEV(プラグインハイブリッド)を足し合わせるとおよそ21%と5台に1台を占めるまでに増加している。街を走るクルマを見ても、フィアット500eやルノーゾエ、テスラモデル3などコンパクトBEVを多く見かける。ちなみに日本の新車販売におけるBEV比率は約2%、PHEVをあわせてもまだ3%といったところだ。 マカンといえば、ポルシェのベストセラーのひとつ。インドネシア語で「虎」を意味するまさに虎の子モデルである。2023年の世界販売台数でも1位がカイエン、ほぼ同数でマカンが続く。初代マカンはデビューから約11年が経過したライフサイクルの終盤にあって、PHEVなどの電動化モデルの設定もないが、新車販売台数はいまなお好調に推移する。 なぜマカンをBEVにしたのか、マカンのプロジェクトマネジャーに尋ねてみた。 「まず、マカンの顧客がどのように使っているのかをリサーチしました。日常的なユースケースではBEVであっても満足いただける充電性能や航続距離などを実現しています。2つ目の理由としては、(メイン市場である)米国での排ガス規制を満たすためには販売台数のボリュームが必要です。そのためにスポーツカーではなく、SUVモデルを選びました。 3つ目の理由としては、私たちはアウディとの共同プロジェクトで、新しいBEV専用プラットフォーム(PPE)を開発しました。このプラットフォームはちょうどマカンが該当するセグメントのニーズを満たしています。BEVへの転換をはかるために、これは良いチャンスだったのです」 ポルシェはいま2030年までに新車販売の80%をBEVにするという経営戦略を打ち出している。そのためにあえて人気のモデルをBEVにするというチャレンジに出たというわけだ。 今回の試乗車は日本でもすでに発表済みの「マカン4」と「マカンターボ」の2種類。ポルシェの慣例としてこれから「S」や「GTS」といったモデルが追加されることになるはずだ。 ボディサイズは全長4784mm、全幅1938mm、全高1622mm(初代は4726/1922/1621)で、ホイールベースは2979mmと先代モデルより86mm延伸。バッテリーを床下に低く敷き詰め、前後シートの着座位置を初代より低くしたことで、クーペのようなスタイリングから想像していたよりも室内空間にはゆとりがある。 インテリアは、タイカンにはじまる最新のデザイントレンドに則ったもの。メーターまわりには湾曲した12.6インチの自立型メーター、センターには10.9インチのディスプレイ、そしてオプションで助手席用の10.9インチディスプレイを採用する。新型のインテリアはBEVだからとすべてをタッチパネル化するのではなく、スタート/ストップボタンをはじめ、エアコンのスイッチ類、オーディオのボリュームなど、アナログのコントロールスイッチを残しているのがポルシェらしいところ。