電気自動車になったマカンは、ポルシェらしさを失ってないか【試乗レポート】
大きさや重さを感じさせず、まるでラリーカーのように軽快に走る
まずはマカン4に試乗する。動き出しはスムーズで申し分ない。ブレーキのフィーリングもさすがのポルシェでブレーキペダルの剛性感は高く、ドライバーの意のままに狙った位置で停止することができる。実は速さよりも、こうした基本的なブレーキ性能の高さこそが、ポルシェらしさと言えるものだ。事前にセットされたナビゲーションに従い、海沿いの道を経てまるでラリーのコースのような山岳路へと導かれる。新型マカンはそれなりに大きく重いクルマのはずなのに、右へ左へと軽快に走る。 翌日は、ターボに試乗した。前日のマカン4で十分と感じていたが、走りだしてすぐにやっぱりターボはいいと思い直す。まずアクセルペダルに対する反応がいいので、運転が楽だし楽しい。そして乗り心地もこちらのほうが洗練されている。のちに開発者に確認したところリアアクセルまわりは、マカン4とターボでは別物で、前後重量配分は、マカン4では50:50のところ、ターボでは48:52とより後輪のトラクション重視のセッティングになっているという。
マカンのパワートレインを使った電動ボートも発売
今回の試乗の基地はアンティーブのヨットハーバーに設けられていたのだが、もうひとつサプライズのプログラムが用意されていた。オーストリアのラグジュアリィボートメーカー「フラウシャー(Frauscher Bootswerft)」社とポルシェが共同開発した、スポーツボート「フラウシャー x ポルシェ 850 ファントムエアー(Frauscher x Porsche 850 Fantom Air)」に試乗できるといものだった。 実はこれは新型マカンのパワートレインをそのまま使った電動ボード。内外装のデザインはポルシェが担当。ボートのフロア下に新型マカンの最新モーター、バッテリーを搭載する。もちろんエンジン音もなく、何より排ガス臭がないのがいい。クルマと同様に電動化によって低重心かつモーターの推進力をラグタイムなく正確にコントロールできるため、従来のボートでは実現できなかった操縦感覚が得られるという。 ファースト・エディションは25隻製作される予定。価格は56万1700ユーロ(約9400万円)から。予約注文はフラウシャー社を通じて行われる。取材時には残り8隻で、日本人で購入した人はまだいないということだったので、ご興味のある方はぜひ。 実は当初マカンは、初代のICE(内燃エンジン)と新型のBEVとを、併売するとアナウンスされていた。しかし、欧州域内でいま世界的に対策が求められているサイバーセキュリティ法(コネクティッドカーに対してハッキングなどのセキュリティ対策を定めたもの)が施行されることになり、それに対応していない初代マカンは販売できなくなってしまったのだ。 日本でも2022年からOTA(Over The Air)対応の新型車への規制が始まっているが、既存車種には猶予期間があるため、国内ではマカンはしばらくICEとBEVが併売されることになる。ただし、残された時間はそれほど長くはなさそうだ。もしICEのマカンが欲しいなら急いだほうがいいかもしれない。