「プレゼントすれば何もかも許されるなんて本気で思ってるの?」ユーザーを叱りつけるAIガールフレンドの善し悪し
■ 「疑似彼女」とのやり取りで人間力は磨かれるか? 確かに生成AIの登場によって、会話自体は人間そっくりに行えるようになったが、それが人間との適切なコミュニケーションにつながるとは限らない。本物の人間が相手であっても、恋愛感情は複雑なものだ。 十分な配慮を行いながらアプリを運営しないと、前述のReplikaで見られたケースのように、ユーザーに深刻な心理的ダメージを与えてしまいかねない。 今回のAngryAIについては、もともと叱られるのが前提であるため、ふられたり厳しいことを言われたりしてもユーザーが感じる心理的ショックは限られるだろう。だが、「彼女」の回答が、実在の女性に対する偏見を与えるものだったとしたら。 先ほどお見せしたように、筆者はデートに遅刻したお詫びとして、プレゼントをあげるよと発言した。これに対しAIは「プレゼントで解決しようとするな」と反応したわけだが、もしそれで怒りを収めていたとしたら、筆者は「叱られたら何か買っときゃいいんだ」と考えるようになったかもしれない。 もちろん、AngryAIはゲームのようなアプリで、それほど深刻に受け止めるほどのものではないのだろう。だが、カジュアルなアプリにも簡単に生成AIや、生成AIを土台としたコミュニケーション機能が組み込まれるようになる中で、こうした「疑似彼女」「疑似彼氏」とやり取りする機会は確実に増えている。 「遊びだから」といって軽視しているうちに、知らず知らず、リアルな人間に対して取ってはいけない態度を取るようになったり、かけてはいけない言葉をかけるようになったりしないよう、十分に注意したい。 【小林 啓倫】 経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。 システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。 Twitter: @akihito Facebook: http://www.facebook.com/akihito.kobayashi
小林 啓倫