日銀「時間的余裕」発言消滅が意味するものとは?金融政策の行方を探る
総選挙での自民党敗北という政治的混乱の最中、日銀は金融政策について現状維持を決めた。利上げに対する逆風は強くなるばかりだが、会見での発言を通じて利上げ継続のメッセージを市場に伝えるなど、苦心の跡がうかがえる。
自民の大敗北で物価高要因が目白押しに
日銀は2024年10月31日に開催された金融政策決定会合において、現在、0.25%となっている政策金利を据え置くことを決定した。今年に入って日銀は、大規模緩和策から脱却し、金融正常化を進める方針を示してきたが、与党内には低金利の継続を求める声が大きく、金融正常化に前向きと思われていた石破茂首相も発言を後退させるなど、日銀にとって逆風が吹いている。 こうした中、総選挙が行われ、自民党は惨敗。大規模な減税策を掲げる国民民主党との政策協議に入ったことで、政治の不透明性はさらに高まった。 国民民主党は103万円の壁を撤廃するなど、所得税の大規模な減税策やガソリン税におけるトリガー条項の廃止、消費税の5%までの減税などを強く主張しており、自民党が国民民主党の政策を受け入れた場合、財政支出が大幅に増えるのは確実である。 現在、政府は防衛費の倍増や子育て支援の強化、石破政権になってからは地方創生交付金の倍増が加わり、支出増をもたらす政策が目白押しである。上記だけでもすでに10兆円近くの金額だが、ここに国民民主が提唱する減税策が加わると、政府の財政負担は極めて重くなる。さらにトリガー条項の廃止や消費減税まで実施した場合、30兆円近い金額が必要だ。 物価上昇による税収増でカバーできるという見解もあるが、物価上昇で税収が増えたということは、いずれ金利上昇による利払い負担が増加することを意味している。税収増による効果は今だけの現象にとどまる可能性が高いだろう。一般会計の規模がわずか110兆円程度しかない現状を考えると、一連の支出増がもたらすインパクトは大きい。 仮にこれらの支出を国債で賄った場合、円安と物価上昇が加速するのはほぼ確実であり、所得増の効果を物価上昇が打ち消してしまうことになる。