日銀「時間的余裕」発言消滅が意味するものとは?金融政策の行方を探る
当面は政治に翻弄され続ける
とりあえず、今回の会合はうまく乗り切った形だが、年末から年明けにかけて課題が山積みであることに変わりはない。 自民党と国民民主党の協議は今週から本格化することになるものの、すぐには合意に至らない可能性も指摘されている。国民民主が提案しているのは、所得税やガソリン税の減税なので、国会での議論は年明けの通常国会にならざるを得ない。そうなると、自民党側には、年末に策定される税制改正大綱に間に合えば良いというスケジュール感が出てくるはずだ。結果として年末ギリギリまで交渉がもつれ込む可能性はそれなりに高いと言えるだろう。 もっとも自民党としては通常国会を乗り切るためには、国民民主の協力が必須であり、一定程度までは妥協せざるを得ない。一方で、仮に103万円の壁に限って議論を行ったとしても、国民民主党の案をそのまま適用すると、前述のように7兆円程度の支出増となる可能性があり、自民としては受け入れにくい。最終的にいくらの金額で合意に至るかが最大の焦点だが、金額が大きくなればなるほど、為替市場では円安が進み、金利上昇圧力が高くなってくる。 円安が進めば、日銀は利上げの方向性をさらに明確に示す必要に迫られ、政治との板挟みがさらに激しくなる。これまでは年内に追加利上げを行うと予想する関係者も多かったが、政治的混乱が続いた場合、日銀は年明けにしか動けないということも十分にあり得るだろう。
執筆:経済評論家 加谷 珪一