トヨタ、ミッドシップ4WD「GRヤリスMコンセプト」世界初公開 モリゾウさんの発想でミッドシップ4WD化
■ ミッドシップ4WDの「GRヤリスMコンセプト」登場 1月10日、東京オートサロン2025が幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開幕した。初日で最初にプレスカンファレンスを行なったのがTOYOTA GAZOO Racing。このトヨタのカンファレンスは、モリゾウさんこと豊田章男会長が登壇するはずだったが、米国ネバダ州ラスベガスで開催されたCES2025からの帰国で少し体調を崩してしまい初日は不参加に。プレスカンファレンスは高橋智也GAZOO Racingカンパニープレジデント、石浦宏明選手、大嶋和也選手、豊田大輔選手が登壇し、みんなでブースを盛り上げた。 【画像】直列4気筒2.0リッターターボのG20E型エンジン。最初から600PSの世界を見すえて開発されている。市販タイプは400PS程度と予想されている。タービンがでかい そのプレスカンファレンスで世界初公開されたのが「GRヤリスMコンセプト」。GRヤリスをベースに魔改造され、リアミッドシップに開発中の直列4気筒2.0リッターターボエンジンを横置き。この直列4気筒2.0リッターターボエンジンの名称も「G20E型」と公開された。 このG20E型エンジンは、エンジンプロトタイプ説明会のときにFRの縦置きエンジンとして公開されたが、その際にトヨタ 中嶋裕樹副社長は「縦にも、横にも置ける」と謎の発言。その謎の答え合わせが、ミッドシップのGRヤリスMコンセプトであったことになる。 このエンジンは400PS以上を実現しており、レーシングヘッドでは600PS以上を目指している。当然ながらそれだけの馬力をリア2輪、しかもGRヤリスのコンパクトなホイールベースで受け止めるのは難しい部分がある。 展示されたGRヤリスMコンセプトを後ろから見て気がついたのは、エンジンが結構後ろに寄っており、さらにエンジン下部にカウンターギヤユニットなるものが存在していた。 そのカウンターギヤユニットは縦軸を持っているもので、リア2輪だけを動かすのには向かない形をしていた。 近くに、GRヤリスの開発に携わる齋藤尚彦主査がいたので、その点について聞いてみると「前、見ます?」とのこと。フロントボンネットを開けていただくと、そこにはセンターカップリングが。つまりリアミッドシップにエンジンを置き、フロントに駆動力を配分。その配分された駆動力をセンターカップリングで適宜配分していく。 このクラッチ機構にはGRヤリスと同じ、ジェイテクトのITCCが用いられており、前後デフのギヤ比も不等配分。ITCCの多板クラッチ開放時は、理屈上で前0:後100となり、接続時は状況に応じてフロント側にもトルクが50%以上流れていく。 MコンセプトのMは「モリゾウのMです」と齋藤尚彦主査は語り、モリゾウさんとGRヤリスを開発していく中で、コーナリング中にパーシャルにせざるを得ない「神に祈る時間」というのがあり、それをなくしていきたかったとのこと。当初は、GRヤリスの1.6リッターターボでテストを始めたが、モリゾウさんのアイディアで開発中の2.0リッターターボを搭載し、フロントも駆動することで、よい傾向が出ているとのこと。 モリゾウさんの姿勢として「まずはやってみよう」というのがあり、まずはやってみたとのことだった。 と言われても、フロントエンジンのGRヤリスをリアミッドシップするだけでも大変な作業であり、さらにそこに新しい4WD機構が組み込まれている。トルクフロー的には、GRヤリスをひっくり返したような状態にはなるのだが、そう簡単なものではないことは素人でも分かる。 トヨタのミッドシップ車としては、MR2やMR-Sがよく知られているが現在は販売されておらず、さらにミッドシップ4WDとなると、グループB時代に試作された500PS以上の出力を持つMR2ベースの「222D」くらいだろうか。WRCの規定がグループAに移行したため幻のマシンとなってしまったが、GRヤリスMコンセプトはすでに走り出しており、スーパー耐久への参戦も公表された。 GRヤリスMコンセプトのMは、モリゾウとのことだが、ミッドシップでもあり、モンスターでもあり、魔改造であるかもしれない。市販化はまだまだとのことだが、とにかくとんでもないクルマがトヨタから登場した。
Car Watch,編集部:谷川 潔