【パラアスリート・小須田潤太編】パラリンピアンはなぜゴルフをするのか?
現地時間の2024年9月8日、パリパラリンピックが閉幕した。2024年9月17日号の「週刊ゴルフダイジェスト」では、日本を代表するパラリンピアンの4人に、ゴルフの魅力やスポーツの意義について聞いている。「みんなのゴルフダイジェスト」では、4回に分けて彼らの言葉をお届けしよう!【全4回中2回目】
“きっかけ”を山本からもらったという小須田潤太。21歳のとき、働いていた引っ越し業者のトラックを運転中、自損事故を起こし、右足大腿部を切断した。 「その場で右足を失ったことはわかったんですけど、まず何よりお客さんの荷物が心配で。痛みを通り越して苦しかったけど、絶対ここでは死なないと思えたんです」 入院中もリハビリも、つらかった記憶はないというが、「義足がなかなか合わなくて。同じ会社の事務職に戻ったんですけど、松葉杖で2年間生活していました」。 義足を真剣に探したのは15年、PT(理学療法士)に薦められ山本のランニングクリニックに参加するときだ。 ここで“生の”山本を見てパラアスリートになることを決断。スノーボード(スノボ)を始めたのも山本の背中を追ってだ。 「篤さんが平昌を目指すと言うから、僕もやるしかないと。18年の大会に出て勝てなかったんですけど、人材もいなくて僕が若かったので代表チームに声をかけてもらい海外遠征に行き始めたんです」 陸上は練習がきついが、スノボは圧倒的に楽しかった。スノボでなら勝負できると思った。 「力を入れなくてもスピードが出るのも面白いし自分に合っているんです。それに無限に成功体験がある。滑っているだけでどんどんできることが増えていくのがスノーボードの魅力です」 16年秋にパラアスリートの転職エージェントの紹介で現在の会社に。東京では走り幅跳びと100m走に出場、冬も北京でクロス、バンクドスラロームに出場した。得意なのはクロスだ。ゴルフを始めたのも山本の誘いから。 「割と普通に当たって楽しかった。スノーボードは横を向いてやるから共通しています。地面を感じながら行うことが大事なのも同じ。ゴルフって、よく老若男女問わず、障害を問わずできると言いますけど本当にそうだと思います。僕は一人予約もよく使いますが、全然知らない人といきなりやっても、楽しい。かなり特殊ですよ。でも、ゴルフって難しさしかない。止まっているボールを打つのにね」と笑うが、最近では上達著しい。 ゴルフではティーチングプロ資格を持つ吉田隼人の背中を追っている。 「同じ障害のすごい人たちの姿を見られるのは自分にとって最大のモチベーション。僕の根底は“2番でいい系”の人間ですけど、やっぱり一番を目指さないと見えてこない世界があるのをパラアスリートになってすごく感じるようになった。何より本気でスポーツをしている人たちに出会えたのが一番よかった。最終的には人は人に惹かれ、自分も本気になれる。そういう意識高い人たちと出会えたのが一番。もちろん、スポーツはやっていて楽しんですけれど。目標は2年後のミラノで金。ゴルフはパラ競技になるのを想定して今年からスイッチを入れます」 「人生、楽しいをずっと更新中です」という小須田潤太、34歳。メダルを引っ提げて、ゴルフ界に凱旋する。
小須田潤太さん・一問一答
Q.障害者がスポーツをするメリットは? A.本気の意識が高い人に出会える Q.ゴルフの魅力は何ですか? A.知らない人とすぐできるって珍しい PHOTO/Yasuo Masuda、Hiroaki Yoda、ご本人提供
週刊ゴルフダイジェスト