フェラーリ・デイトナの再来か? 新型スーパースポーツ「12チリンドリ」はV12エンジン搭載で830馬力!
フェラーリは2024年5月3日、新型スーパースポーツ「12Cilindri(ドディチ・チリンドリ)」を発表した。V型12気筒自然吸気エンジンをフロントミドに搭載し、最高出力830馬力を発生する新しい跳ね馬の正体とは? 小川フミオが現地からリポートする。 【写真を見る!】フェラーリ最新モデル「12チリンドリ」の詳細画像はコチラから(全50枚)
830馬力! 6.5リッターV12エンジン搭載
フェラーリが2024年5月3日、新車「12Cilindri(ドディチ・チリンドリ)」を米マイアミで発表した。車名はイタリアで“12気筒”。その名のとおり、高性能化した12気筒エンジンをフロントに搭載し、クーペとスパイダーが同時にデビューを飾った。 「この時期に12気筒!」 正式発表に先立って、イタリアのフェラーリ本社を会場に、各国のジャーナリストを集めて事前説明会が行われた。そのベールがはがされたとき、どよめきが起こった。ちらほら噂は出ていたが、ほんとに12気筒だった、というのが集まったリポーターたちの驚きだった。 「私たちのラインナップには、プラグインハイブリッドのSF90ストラダーレもあるし、6気筒の296シリーズもあります。パワートレインに関して、あらゆる可能性を追求しています。そこには当然、私たちの伝統ともいえる12気筒も含まれています」 エンジニアリングを統括するジャンマリア・フルゼンツィ氏は、クルマを前にしてそう説明してくれた。 「12気筒の2シータークーペというと、812スーパーファスト(2017-22年)がありました。12チリンドリはさらに性能を向上させたモデルです。6.5リッターエンジンには改良を加えていますし、ホイールベースは短くしたうえで、左右輪が別々に動く後輪操舵システムを組み込んでいます。サーキットのコーナーではより機敏に、いっぽう高速での直進性はより安定的に、とGTとしての性能を充実させました」
かつての「デイトナ」を彷彿とさせるフロントマスク
スタイリングも目を惹く。フロントエンジンの後輪駆動という、1950年代から続くフェラーリの伝統的なメカニカルレイアウトを継承しつつ、エンジンは出来るだけ低く、そして前輪より後ろに搭載するフロントミドシップを採用する。 どことなく、1968年の365GTB/4、通称「デイトナ」を思わせるノーズを持ついっぽう、クーペでは、これまで見たことのない形状のリアのグラスハッチを備えている。 「(コンコルドなどで知られる)デルタ翼のイメージです」とヘッド・オブ・デザインのフラビオ・マンツォーニ氏は語る。 この広いデルタ翼形状の特徴的なリアウインドウのデザインを損なわないように、フェラーリのエンジニアは、電動リアスポイラーを2分割にした。最大で10度まで立ち上がり、後輪の浮き上がりと、空気がクルマを引っ張って速度が鈍るのを防ぐスポイラーが備わる。 「フェラーリでは、“フォルムは機能に従う”のプリンシプル(原理・原則)を守っていますが、同時にエレガンスは非常に大事なので、デザイナーとエンジニアは常に緊密に連絡を取り合いながら、クルマを作っています」と、マンツォーニ氏。 12気筒としてはコンパクトでも、ボリュームあるエンジンをフロントミドシップにし、機敏なハンドリングのためにホイールベースは切り詰め、空力処理を各所に施した12チリンドリ。走りのよさが常に重要なフェラーリとあって、エンジニアは出来るだけ妥協のない設計を追求したようだ。 いっぽうデザイナーは、そこに“スキン”と称されるボディ外皮を用意する。12チリンドリでは「コッファンゴ」(上顎)とフェラーリが呼ぶ、フェンダーと一体型となったクラムシェル型のボンネットでフロントを包み込む。曲面が部分的に力強く盛り上がっていて、美と緊張感が上手に盛り込まれている。