日比谷の再開発、京都の新規ホテル、オンラインモール開業、新しいおもてなしを生み出す「帝国ホテル」の新たなチャレンジ
日本が誇るホテルブランド、『帝国ホテル』が進化している。130年を超える歴史と伝統を紡ぎ、いまなお挑戦を続けるなか、どのように変化するのか。新たに取り組む3つの事業について、旗艦である『帝国ホテル 東京』の総支配人・八島和彦さんに聞いた。 【写真】帝国ホテルはどんな風に生まれ変わる予定?イメージパースを見てみよう
日比谷再開発や京都新規ホテル初のオンラインモールに挑む
「TOKYO CROSS PARK構想」と題した日比谷エリアの再開発計画。都心最大級のプロジェクトを10社の大手企業が推進し、帝国ホテルはその一社として手を挙げた。建て替えで姿を変える『帝国ホテル東京』。2023年4月、第14代総支配人に就任した八島和彦さんが、進化の舵取りを担う。 「『帝国ホテル 東京』の再開発は、タワー館の建て替えを皮切りにスタート、同館は2030年に完成予定です。2031年からは本館の建て替えに着手。新本館は建築家・田根剛さんがデザインを手掛け、2036年に宮殿と塔(タワー)を融合させた唯一無二の建物が出来上がる予定です。様変わりする日比谷・内幸町地区のランドマークとなるのを期待しています」 新本館とつながる新タワー館では、長期滞在向けのサービスアパートメントを展開。コロナ禍で誕生し、好調に稼働した同事業がさらにグレードアップされる。 「最新の施設を備えた高級サービスアパートメントを想定。これまで培ったノウハウを活かし、長期滞在する間、帝国ホテルのサービスを利用できるという新しいモデルの充実を図る形になるでしょう」 再開発地区は3つのエリアに分けられ、計画では40階以上の超高層ビルが立ち並ぶ。新本館と新タワー館は北地区にあたり、そのほか中地区、南地区で構成。帝国ホテルは、この中地区のセントラルタワー上層階にて、NTTグループと共同で客室数100程度のスモールラグジュアリーホテルを2029年に開業する予定だ。 「正式なブランド名や客室単価などは決まっていませんが、隣接する新本館との差別化で、従来の帝国ホテルのイメージとは一線を画すホテルになると思います。少し尖った個性を出しつつ、心地よさを併せ持つ感じでしょうか」 明治時代の1890年に誕生した帝国ホテル。130年以上の歴史を積み重ねながら挑戦を忘れないわけだが、新たな歩みは東京に限らない。2026年春、30年ぶりに帝国ホテルブランドのホテルが京都にオープンする。 「京都進出は早い段階から検討していました。国内事業者や外資のホテルが乱立する中、どんな策をとればいいのか。吟味を重ね、ご縁にも恵まれたことで歴史的・文化的に価値のある祇園甲部歌舞練場敷地内の『弥栄会館』をホテルとして活用するベストな選択につながりました。ブランドをより強固にできると信じています」 一方、今年11月には、顧客と新たな接点を築く新ビジネスが始動する。帝国ホテル初の試みとなる、オンラインモール「アナザーインペリアルホテル」の事業だ。 「私たちのホテルでは自社商品をオンラインショップで販売していますが、これとは異なるものです。帝国ホテルには熟練のスタッフが多数在籍し、その目利きによって厳選した全国各地の逸品をオンラインモールでご案内します。太鼓判を押した品を通じて信頼度を上げられ、オンラインなのでそのネットワークを全国に広げられるのが利点です。もうすぐローンチですので、楽しみにお待ちください」 こうした帝国ホテルのハードの変化や新たな取り組みを支え、サービスを提供するのが人であることは言うまでもない。130年以上の歴史の中で紡いできた人のサービスのクオリティーを上げることが、最終的には成功のカギを握るという。 「人=従業員が気持ちよく働ける環境の整備を第一に考えています。従業員の満足度を高めれば質の高いサービスを提供でき、お客様の満足度も上がる。その結果として収益が上がり、新たな投資や従業員の給料も上がるという好循環が生まれるのです。人を大事にしてサービスやブランド価値向上を目指し、帝国ホテルの新たな時代を築いていければと思っています」 『帝国ホテル 東京』総支配人 八島和彦さん 1971年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、1994年に帝国ホテル入社。営業畑を長年歩み、2022年4月、『帝国ホテル 東京』副総支配人兼ホテル事業統括部長。2023年4月、執行役員東京総支配人。同年6月、取締役執行役員東京総支配人に就任した。