「早く!」「いい加減にして」「好きじゃない」親が後悔しているわが子への言葉。教育評論家の親野智可等さんに聞く
もしも後悔するような言葉を子どもに言ってしまったら
――体験談にあるような、子どもにきつい言葉を言ってしまった時はどうすればいいのでしょうか? 親野さん 「まず大事なことは、『ごめんね、ママ(パパ)、言い過ぎちゃった』というように、すぐ謝ることです。 これが一番大事なこと。子どもは感情的に叱られた時に、複雑な気持ちになるけれど、ママやパパが『ごめんね。言い過ぎちゃったね』と率直に謝ってくれると、子どもは素直に嬉しいんです。 また、子どもはまだ年齢的に自分の気持ちを上手に伝えられないことがほとんど。そんな時に『◯◯したかったんだね』とか『自分でやりたかったんだよね』などと、子どもに共感したり、子どもの気持ちを代弁してあげたりすると、子どもも落ち着いて親の言葉に耳を傾けようとするし、その積み重ねが癇癪を起こす回数を減らすことにも繋がります。 『ごめんね。言い過ぎちゃったね』と心を込めて謝り、我が子をハグしましょう。否定的な言葉をぶつけられてしまった事実は消えなくても、『ママ(パパ)は謝ってくれたし、自分の気持ちもわかってくれたんだ、よかった』と思えるわけです。 親が謝る姿を見せることは、何か悪いことをした時に謝るというお手本にもなります。この単純なことがすぐにできないことが多いので、ぜひ実践してみてください」
何度も子どもにあたらずにすむ方法とは?
――“悪い”と思ったら謝るのが一番なのですね。ちなみに、子どもにあたらずにすむ方法はないものでしょうか。 親野さん 「親がキレてしまうのは、だいたい9割程度が毎回同じようなシチュエーションにおいてです。まったく新しいことでキレるケースは少ないですね。 そのため、少し考えて工夫をしてみてほしいと思います。実は、ちょっとの工夫で長年の悩みがあっさりと解決したケースもたくさん見られるのです。 具体例をお話ししましょう。 あるお子さんが、食事中にやたらと食べ物をこぼしていたのだそうです。そのたびにママは『なんでこぼすの? ダメでしょう』と叱っていました。 ところがある日、子どもが食事している様子を見ていると、食器の縁が平らすぎてスプーンですくうとこぼれやすい形状だということに気づきます。さらによく見ると、子どもの口の位置と食器までが離れていて、そこでこぼれていることにも気づきました。 翌日、食器を変えて椅子の高さを調整したら、こぼすのが半分以下になったそうなんです。 また違う家庭では、親子で約束した朝顔の水やりを、いつも子どもが忘れて困っていたそうです。そこで夜寝る前に、水を入れたペットボトルを枕元に置いて寝るようにしました。すると、その子は朝起きてすぐに、そのペットボトルで水をあげる習慣がついたそうです。 ちょっとしたアイデアですよね。 全部のケースがすべて、観察と工夫でうまくいくわけではないでしょうが、子どもに『なんで? 』と言う前に、親自身が『なんでなんだろう? 』と観察したり考えたりすることで、叱らずにすむ工夫は見つかるものです。 自分でやりたがる年齢の子どもに手を焼く方も多いようですね。 もしも出がけに、子どもの支度が自分でできなくてグズッていたら手伝ってしまって大丈夫です。自分でやらせないと成長しないと悩む親御さんもいますが、手伝うことで、子どもの成長を妨げるなんてことはありません。徐々にできるようになったら、ほめればいいのです。 親は何かと子どもを責めがちですが、『なんでなの? 』『ダメでしょ!』と言われ続けることはすごいストレスになり、やがては『親はボクのこと(私のこと)、わかってくれない』と思い込んでしまいます。 だから大切なのは、子どもに共感すること。そして折に触れ、ほめること。責められれば反発したくなりますが、ほめられれば素直になるのが子どもです。 悪いところがあれば謝り、工夫し、共感をしてハグをする。そうした繰り返しを重ねることで親と子の信頼の土台が築かれます。それが親子でぶつかる回数を減らす近道にもなるのです」 悪いと思ったら謝る。何かうまくいかないことがあれば、その原因を考えて改善していく。子育てだけでなく、人としての基本にもつながりますね。 (取材/文・橋本真理子、たまひよONLINE編集部)