秋山幸二氏が見たソフトバンク敗退の日本シリーズ 流れが変わった本拠地での第3戦「打ちたい」が強すぎた4番山川穂高 若手に感じた大舞台での〝経験〟の重さ
◆SMBC日本シリーズ2024 DeNA(4勝2敗)ソフトバンク(10月26日~11月3日) ソフトバンクは敵地横浜での2連勝はいい戦いをしただけに、本拠地福岡に戻っての3連敗は予想できなかった。 ■大ナタ22選手に…ドラ1右腕ら戦力外【一覧】 決着がついた第6戦は有原もDeNAの勢いを止められなかった。売りの打線もつながらず、第3戦の二回から29イニング連続無得点と振るわなかった。 流れが変わったのは、やはり東に抑えられた第3戦だろう。3位からクライマックスシリーズを勝ち上がった相手に勢いがあるのは分かっていたが、ここまで先発がいいとは思わなかった。第4戦のケイ、中4日で第5戦に投げたジャクソンも球に力があり、目を見張るような出来だった。 第3戦は故障明けの東から10安打を放ちながら、得点は初回に近藤の適時打で奪った1点だけ。絶妙な制球力で両サイドの出し入れをしながら、低めに球を集め続けた左腕に勢いを止められた。各回の先頭打者を塁に出せず、ベンチも細かい作戦を使えなかった。 右足首を痛めている近藤をDHで使える本拠地で1勝すれば、日本一に王手をかけられた。そうなれば、DeNAにもプレッシャーがかかったはずだ。ただ、第4戦以降も打線の調子がなかなか上がらず、大事な先取点を取ることができずに押し切られてしまった。 第2戦で2ランを含む3安打3打点と活躍しながら、第3戦以降は完璧に抑えられた4番山川は「打ちたい」という気持ちが強いあまり、ボール球に手を出し過ぎた。もちろん、相手には山川をしっかり研究した上で、そこに投げられる投手がいたということだ。 点が入らなかったことが一番の敗因とはいえ、若い救援陣が中盤に追加点を取られたことも響いた。今シリーズは実績がある松本裕、藤井らが故障で不在。八回以降はヘルナンデスとオスナが控えていたが、先発が早めに降板した後をどうするかという部分に難しさがあった。 尾形、岩井、前田純らの若手を、小久保監督は期待を持って送り出したはずだ。ただ、シーズンでも経験が少ない彼らにとって、初の日本シリーズという難しさもあったのだろう。いいピッチングもあったが、若さゆえの計算しにくい部分が出てしまった印象だ。 打線では第4戦でいい働きを見せた4年目の笹川も、1番に起用された第5戦は無安打。やはり大舞台での経験の有無は大きい。「楽しまないと」と話していた今宮は6戦連続安打で敢闘選手賞に選ばれ、柳田も本塁打は第6戦の1本ながら打率3割2分を残した。 私が日本シリーズに初出場したのは、23歳で初めて40本塁打を打った1985年。直前に右人さし指の靱帯(じんたい)を断裂し、緊張する余裕もなかった。阪神に2勝4敗で敗れ、私もノーアーチと散々だったが「けがしてもやれる」という自信がついた。その経験もあり、その後は短期決戦を思い切って楽しめた。 今シリーズで起用された若手は貴重な経験を積むことができた。特に投手はいい面、悪い面を味わっただろうが、克服すべき課題も明確になったはずだ。一つのプレーで試合が動く怖さを知れば、練習や準備をしっかりするようになる。この悔しさは来季に必ず生きることだろう。(西日本スポーツ評論家) 【#OTTOホークス情報】 ▼「敗戦の責任は全部僕にあるので」ソフトバンク小久保監督の一問一答は(おすすめ記事)から▼
西日本新聞社