国家の情報保全措置の一環「セキュリティー・クリアランス制度」可決 情報漏洩には拘禁刑・罰金刑、差別・プライバシー侵害などの懸念も
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月15日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『セキュリティー・クリアランス』制度を創設へ 懸念点は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆「セキュリティー・クリアランス」とはどんな制度?
経済安全保障分野の重要情報について、取り扱う資格がある人を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス」制度(※)を創設する新たな法律が、5月10日(金)に参議院本会議で可決成立しました。 (※)セキュリティー・クリアランス制度とは? 国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者(政府職員および必要に応じて民間事業者などの従業者)に対して政府による調査を実施し、当該者の信頼性を確認したうえでアクセスを認める制度のこと 塚越:政府の職員だけでなく、民間人にも政府が保有する「安全保障上の機密情報」にアクセスできる人を選んで資格を与える制度です。 ただ、情報のなかでも漏洩すると安全保障に問題が生じる情報を「重要経済安保情報」に指定して、資格を持った人が漏洩すると、5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金、あるいはその双方が科されて、民間人の場合は所属企業にも罰金が科されるということです。 この「重要経済安保情報」への指定が想定されているのは、重要インフラへのサイバー攻撃に対する防御策や、半導体のような先端技術の研究に関する外国政府の情報などです。共同研究をするときに海外の情報を知るということもあります。
◆欧米各国との足並みをそろえたい意向
吉田:「安全保障上の機密情報」にアクセスできる人は、どうやって選びますか? 塚越:内閣府に新設される調査機関が調査をします。政府職員でも民間人でも、対象者の同意を得たうえで7項目が調査されます。 具体的には「犯罪歴」「情報の取り扱いに関する違反歴」「薬物使用歴」「精神疾患歴」、そして「重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項(※家族・同居人の氏名、生年月日、住所、国籍含む」「飲酒節度の状況」「経済状況」の7項目に関して身辺調査をおこない、機密を提供する人物に適していると判断されると資格が与えられるということです。初年度の対象となる人物は、だいたい多く見積もっても数千人程度と考えられています。 ユージ:そもそも、なぜこのような制度が必要なのですか? 塚越:機密情報を取り扱える人を認定する制度は、2014年に施行された「特定秘密保護法」があり、そこでは防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野は対象になっています。ただ、G7で日本は唯一、「経済安保情報」を取り扱える人を認定する制度がありませんでした。そこで今回は、欧米各国と足並みをそろえたいというものです。 先端技術の研究では機密情報にアクセスすることもあるので、経済界としても、こうした制度があれば、もっと国際的な研究開発ができると歓迎する声もあります。これまでも(日本は)海外との機密を含む共同開発に参加できないという事例がありました。特定秘密保護法では認定の対象者は、ほとんどが公務員でしたが、今回は経済分野が対象になるので、必然的に民間人も多くなるということです。 ユージ:今、持っている限られた人の知識だけでなく、民間人にも広げていくということですね。