米国撃破の森保Jはなぜ「鎌田大地のチーム」に変貌を遂げたのか
インサイドハーフに指名されたのは守田と、東京五輪代表の田中碧(24、フォルトゥナ・デュッセルドルフ)。ボランチ勢で構成された3人の中盤には守備を安定させる目的があったが、オーストラリア戦では田中が先制ゴールを一閃。終了間際のオウンゴールで勝ち越す劇的な結末とともに、日本はV字回復へのきっかけをつかんだ。 勝っているチームはいじらない、なるサッカー界の鉄則のもと、指揮官は11月以降も同じシステムを継続。守田が累積警告で出場停止となった、敵地マスカットでのオマーンとの再戦も出番なしに終わった鎌田は、年明けからは招集すらされなくなった。 「代表に行って(体力的に)きつい部分もあったし、上手くいかなかったし、さらに結果も出ていなかったので」 2019年の後半から台頭し、2020年には南野拓実(27、モナコ)を左サイドに押しやる形でトップ下のレギュラーを拝命。しかし、出場すれば初めてとなるワールドカップへの流れが途切れる状況を、鎌田は当然とばかりに受け止めた。 それでも一度も下を向かなかった鎌田は、プラス思考で逆境を好転させた。 「代表に選ばれなくなったから所属チームにフォーカスできた。選ばれなかったから落ち込んだこともいっさいなかったし、所属チームでの試合数が多かったなかで、逆に代表ウイークでしっかりリフレッシュできた。いま思えばプラスの面もあった」 昨年5月末に就任したオリバー・グラスナー監督の存在も大きかった。 「守備にすごく厳しいというか、攻撃よりも守備という監督だったので。ただ単にボールを奪うだけでなく、正しいポジション取りをするところであるとか、画面に映らないところですごく評価してくれて、僕自身も守備へのモチベーションが上がりました」 シーズンが深まるごとに心身のコンディションが上がり、代表へ呼ばれなくなった年明け以降の日々でさらにリフレッシュできた。そこへ守備でのハードワークをまず求める新監督の存在が、鎌田のなかで極上のハーモニーを奏でさせた。 ブンデスリーガこそ11位だったフランクフルトだが、UEFAヨーロッパリーグでは快進撃を果たす。準々決勝で強敵バルセロナを2試合合計4-3で撃破すると、準決勝でも鎌田の活躍でウェストハム・ユナイテッドに勝利。決勝ではPK戦の末にグラスゴー・レンジャーズを下して歓喜の雄叫びをあげた。 クラブとして実に42年ぶりの国際タイトルを獲得した直後。指揮官から「私たちの守備で、君が一番大事な選手だった」とねぎらわれた鎌田は、右肩上がりで幕を閉じた昨シーズンをこんな言葉で表現したことがあった。 「終わりよければすべてよしじゃないけど、すべてがよくなった感じです。去年より(攻撃面での)数字は落ちたけど、監督からの信頼を勝ち取れたし、ヨーロッパリーグを含めて多くの試合に出られたなかでタフさも戻ってきたので」