年金は65歳からの受給が原則ですが、早くもらうことも、遅くもらうこともできると聞きました。結局、何歳からもらうのがおトクですか?
繰下げ受給のメリット・デメリット
繰下げ受給のメリットは、年金額が増額されるということです。長生きするほど老後の資金が枯渇するリスクは高まるため、長生きリスクに備えるなら繰下げ受給を検討するといいでしょう。 一方、次のようなデメリットがあります。 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点で、その方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されます(加給年金)。 配偶者の加給年金が65歳に到達したことで終了する際、その代わりに配偶者の老齢基礎年金に上乗せされる年金のことを振替加算といいます。 繰り下げ請求すると、加給年金額や振替加算額については増額の対象外です。また、繰り下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受給することはできません。 税金や社会保険の自己負担が増加する可能性があります。
長生きするほど繰り上げは損、繰り下げは得
皆さんが関心のあるのは「結局、繰り上げと繰り下げ、何歳でもらうのが得なのか」ということではないでしょうか。損益分岐点年齢を確認してみましょう。 まず、繰り上げの「損得分岐点年齢」を考えてみましょう。 たとえば、60歳で受給する場合、減額率は24%ですので、65歳からの本来の受給額の76%になった年金を5年分先に受給できます。つまり、早く受給できるのは380%です。 繰り上げしない場合、65歳からの本来の受給額は100%ですので繰上げ受給より24%分多い額を受給できます。したがって、65歳から15.83(380÷24)年後に繰り上げの先取り分に追いつきます。つまり、80歳10ヶ月が、60歳から年金を受給した場合の損益分岐点年齢になるので、約81歳より早くに亡くなった場合、繰り上げたほうが受取額は多い、ということです。 ちなみに、60歳の平均余命は男性23.68年(約83歳8ヶ月)、女性28.91年(約88歳11ヶ月)です。 次に、繰り下げの「損得分岐点年齢」を考えてみましょう。 1年繰り下げた場合の繰り下げ増額率は8.4%です。1年繰り下げることによって失われる年金額は100%です。この100%に追いつくためには約12(100÷8.4)年かかります。2年以上の繰り下げも同様です。つまり、年金受給開始の年齢に12を足した年齢が損益分岐点年齢となります。70歳から年金の受給を開始した場合であれば、82歳が損益分岐点年齢です。 また、75歳から受給開始をした場合、損益分岐点年齢は約87歳ですので、約87歳より遅くに亡くなれば、繰り下げたほうが受取額は多い、ということです。 ちなみに、65歳の平均余命は男性19.52年(約84歳6ヶ月)、女性24.38年(約89歳5ヶ月)です。
まとめ
では、公的年金受給年齢はどのように決めるのがよいのでしょうか。 単に受給額の損得から決めるのではなく、今後のライフイベントと収支を見通し、お金の使い道も考慮して決めるといいでしょう。 繰り上げして「元気なうちにお金を趣味やレジャーに使い楽しみたい」、繰り下げして「介護・医療に備えたい」など使途が明確になれば、おのずと公的年金の受取時期が見えてくると思います。 出典 日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給 厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 執筆者:新美昌也 ファイナンシャル・プランナー。
ファイナンシャルフィールド編集部