今年の大河ドラマ主人公 「黒田官兵衛」ってどんな人?
だが、これは自軍の兵に向けた官兵衛の「計算」であった。部下たちの心中を見透かし、天下取りのうわさを流したのである。これを耳にした兵はがぜん奮い立った。光秀を討てば秀吉の天下になる、おれたちもその恩恵に浴せる、と。 官兵衛は「上司」秀吉の心の内だけでなく、「部下」一兵卒たちの心理を読むことにも長けていたのである。
届かなかった?天下取り
かくして、こねた天下餅を食らえる座に就いた秀吉は、ある日側近たちに「わしの後、天下を取るのはだれかな?」とたずねたという。口々に五大老らの名を挙げる側近に向かい、秀吉が告げたのは、黒田官兵衛の名であった。 官兵衛にもその野心はあったといわれる。だが、官兵衛が天下餅を食することはなかった。天下人に畏れ、恐れられた不敗の軍師も、「天運」を引き寄せることはできなかったのだ。 天下餅をつく信長を支え、こねる秀吉の名参謀となり、食らう家康からも一目置かれた黒田官兵衛。1604年、戦国の世の終焉を見届けた直後、59歳で生涯を閉じた。 (フリー編集者・大迫秀樹)