昇格1年目のFC町田ゼルビア、健闘の3位 課題と得られた手応え
(8日、J1最終節 鹿島アントラーズ3―1FC町田ゼルビア) 史上初のJ1初昇格初年度での優勝へ。町田が「細い糸」を引き寄せるための必要最低条件は勝利することだった。ただ、前のめりの姿勢がつまずきを生んだ。 【写真】優勝争いに生き残ったJ1町田の命綱とは 前半5分、ロングスローからの好機をものにできなかった直後だった。鹿島のFW鈴木優磨の縦パスを受けたFW師岡柊生に先取点を許した。さらに、11分後にはDF陣の間にスルーパスを通されて簡単に2失点目を喫した。 リスクを負ってでも攻める必要があるとはいえ、リーグ最少失点の「堅守」が売りのチームが早々と続けて失点したのは痛すぎた。 この試合前まで、鹿島との今季の対戦成績は、リーグ戦は1―0、ルヴァン杯では2―0と2連勝。苦手意識はないはずだった。ただ、この日は点を取るために攻撃に人数を割いたこともあり、相手に素早いカウンターを仕掛けられて何度もピンチを招いた。 今季は一時、首位を独走したものの、シーズン後半に失速した。前半19試合は12勝4敗3分けの勝ち点39で首位ターンも、二回り目に入った後半19試合は7勝6敗6分け。ロングスロー対策をされるなど、9~11月にかけては5戦連続勝利なしと終盤は特に苦しんだ。 鹿島戦後、黒田剛監督はこう振り返った。「心技体すべてにおいて、もう一回り成長しないと常に優勝争いするようなチームになるのは難しい」 来季に向けて手応えを得たものもある。磨き上げてきたセットプレーだ。この日唯一の得点も左CKからだった。MF相馬勇紀が近づいてきたMFドレシェビッチに転がしたパス。1タッチで中央へ送った球をMF下田北斗が得意の左足で蹴り込んだ。準備してきたことが分かる、見事な得点だった。 「3位でフィニッシュできたことは選手をたたえるべき。もっと強い町田として、来年もう一度チャレンジしていきたい」と黒田監督。 開幕前、J1初昇格のクラブが最終節まで優勝争いをすると予想できただろうか。2024年のJ1を盛り上げたのは、間違いなく町田だった。(辻隆徳)
朝日新聞社