名古屋「スズサン」、伝統工芸でハイエンド市場参入に成功、その戦略と展望をCEOが語る
日本の伝統工芸がハイエンド市場から注目を集めている。「有松鳴海絞り」の「スズサン(SUZUSAN)」は、欧州で人気に火が付きパリ「レクレルール(L'ECLAIREUR)」、ミラノ「ビッフィ(Biffi)」、ベルリン「アンドレアス ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)」といった好感度セレクトショップに並び、現在30カ国80都市120店舗に販路を持つ。自社ブランドの製造販売だけでなく、「ディオール(DIOR)」など数々のラグジュアリーブランドから依頼を受け、絞りを施したテキスタイルを提供する。2008年に3人でブランドを立ち上げ、現在の社員数はドイツ法人が7人、日本が20人(取締役を除く)にまで増えた。4代目の父1人だった技法の担い手は沖縄や兵庫からの移住者も含め12人に。7~8工程の分業制の技術「有松鳴海絞り」を、スズサンでは一貫生産しそれぞれの工程も担い手たちが重複して行っている。「有松鳴海絞り」の高付加価値化と伝統工芸の担い手育成を成功させたのが5代目の村瀬弘行スズサンCEO兼クリエイティブ・ディレクターだ。村瀬CEOにどのようにして伝統工芸をハイエンド市場にマッチさせたのか、その市場開拓の戦略や今後の展望を聞く。 【画像】名古屋「スズサン」、伝統工芸でハイエンド市場参入に成功、その戦略と展望をCEOが語る
WWD:まず「有松鳴海絞り」の特徴について教えてほしい。
村瀬弘行CEO兼クリエイティブ・ディレクター(以下、村瀬):200種類以上の技法があること。これは世界にも類を見ない。現存している染色技術は4000年前に生まれ、インドやアフリカ、南米などで見られるがその多くは1つの地域に2~3技法。有松の歴史は1608年の江戸初期に始まり、江戸時代は専売制が敷かれ「絞りは有松だけ」というお触れによって産業として発展した。歩いて15分圏内に「誰々さん家は〇〇絞り」といった具合に200以上の技法が生まれた。
WWD:そもそも村瀬さんはアーティストになりたくて海外に留学した。なぜ「有松鳴海絞り」を?