「こうなった以上、青瓦台に行く」脚本家ユン・ソンホ ユーモアとホープパンクで、日常に希望を
――最近の作品ではどうでしょうか?
ソンホ:坂元裕二さんが脚本を担当した「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(以下、いつ恋)」や「最高の離婚」がとてもおもしろかったです。自分も「いつ恋」の現実的で不穏な雰囲気と昔の日本のドラマ「ロングバケーション」の楽観性を掛け合わせたような作品をいつか作りたいですね。余談ですが、韓国のロマンティックコメディを作る脚本家たちは、1990年代の日本のドラマから影響を受けている人が多いと思います。
――韓国のドラマや映画の中で食事をしているシーンに特にエネルギーを感じます。過去に作ったモバイルドラマシリーズでは、日本の「食」に影響を受けたそうですね。
ソンホ:世界には、シェフやレストランをテーマにした作品はとても多いですが、これまで日本の食を取り上げた作品の多くは料理人よりも日常の食卓やリアルな食事風景を描いてきたと思います。
日本の脚本家は、日常の何気ない瞬間を描くのがとても上手ですよね。例えば、買い物から料理、食事に至るまでのプロセスをエネルギッシュに描き、その後のシーンで「今日も1日終わりだね」と締めくくることで、どこかホッとするような楽観的なシーンが多いように感じます。しかし、私がもし脚本を描くなら、食事が終わった後に「おなかはいっぱいになったけど、まだ解決しない問題が残っている。それでも、今日はこのまま終わっていくんだ」と描くと思います。日常で解決できない問題や悩みがあっても、それを抱えながら過ごしていくというリアルな一面を表現したいからです。
――韓国のドラマや映画は世界に広く普及していますが、今後のキャリアをどのように考えていますか?
ソンホ:脚本も演出もやっているため、今は現場で監督と呼ばれることが多いんですが、今日の取材で脚本家と呼ばれることがとても嬉しいです。今後は、演出よりも脚本を書くことに専念していきたいですね。
体力的な理由もありますが、世界で起こっている戦争や環境問題、災害など複雑な問題を違った側面から描きたいからです。現在のドラマや映画の多くは、これらの問題を極端に表現するか、全く反映させないかに分かれているように感じます。アポカリプスやディストピアの物語が人気の一方で複雑な問題の中でもささやかな日々の楽しさを描く物語、「ホープパンク」の精神で希望を描きたいですね。
TRANSLATION:HWANG RIE COOPERATION:HANKYOREH21,CINE21, CUON