「こうなった以上、青瓦台に行く」脚本家ユン・ソンホ ユーモアとホープパンクで、日常に希望を
――「青瓦台に行く」で、政治家たちの会議は形式的で実質的な進展がない、まるでプロレスの試合のようだと表現していました。
ソンホ:その表現はネットの書き込みやコメントを参考にしました。中には私がドラマで作ったナレーションよりも、韓国の与党と野党がやり合っている状況を上手に言い表しているコメントがたくさんあります。例えば、「政治討論は本当の議論ではなく、形式的に会議をすすめているように見えるから『空手の組手』」と言う人もいました。韓国は政権が変わると社会も様変わりするので、世界的に見ても国民たちの政治への関心はとても高いですね。
――ネガティブなテーマを笑いに転換させるテクニックを教えてください。
ソンホ:まず、私は脚本と演出の両方を手がけているため作品のコントロールがしやすいことが前提ですが、ブラックコメディを作る上でセリフの意図やニュアンス、トーン、言い回しをしっかり俳優に伝え、お互いに確認しながら進めることが重要です。
あとは個人的な感情と一定の距離を置くことですね。政治、仕事、男女関係などあらゆるテーマをブラックコメディとして扱えますが、主題から離れた客観的な視点を持つからこそ、物事を別の視点から考察する様子が描けると思います。
――影響を受けた作品はなんですか?
ソンホ:国内外の作品から影響を受けています。例えば、日本の作品はシリアスなテーマを扱いつつも、 意図的ではない絶妙な間で笑いの要素を入れているところにおもしろさを感じます。特に今村昌平監督の「楢山節考」にブラックコメディの要素を感じますね。人間関係の本質を追求したシリアスな作品ですが、登場人物を俯瞰して見るような描き方に学ぶものが多くありました。この作品は、すごくリアルに人間の生きる姿を描いているものの、状況を大袈裟に描いたり、残酷な姿や苦しんでいる表情をクローズアップしません。全体を見渡すことで、あらゆる感情が交差しているように感じられる素晴らしい作品だと思います。