《記者コラム》日本ブラジル新時代のカギはエネルギー保障=大陸横断ルート建設に日本勢も参加を
もう一つ「グリーン水素」は再生可能な資源から作られるので、環境への悪影響が少ない。現在「グリーン水素」製造で最も一般的なのは太陽光や風力によって作られた電力を使用して水分子を分解する方法だ。もともとも電力の8割が水力発電だったブラジルだが、太陽光も風力も急拡大中だ。 ただし、水素燃料は輸送に困難がある。低温高圧で保管する必要があるため、物流にコストがかかり、最終製品の価格が高くなる。だがUSPのプロジェクトでは、エタノールを水素の原料として使用する新しい製造方法を開発中だ。当地のエタノールはサトウキビから生成されるため、植物としての成長過程で二酸化炭素を取り込むため、グリーン燃料として認められている。このエタノールの形で輸送して、現場で水素にするので物流問題も解決する。 この技術が実用化すれば、まさに「グリーン水素」は次世代エネルギーの筆頭になる。日本がブラジルからエタノールを輸入して水素生産すれば代替エネルギーになる。 準有事体制ともいえる現在、日本にとってエネルギー安全保障政策の幅を広げることは国益にかなう。日本はかつてセラード開発によってブラジルの利用可能な農地を飛躍的に広げて、世界一の大豆生産国になれる基盤を作った。ブラジルがエネルギー資源大国になるように後押しをすることは、日本の国益ではないか。
南米横断5ルート建設で地理的障壁を解消
そんな中、南米統合を促進してアジアへの輸送迅速化を進めて「地理的障壁」を解消する巨大プロジェクト、南米横断5ルート建設計画が昨年12月に連邦政府から発表された。 23年12月12日付エスタード紙(2)によれば、開設予定の五つのルートのうち、三つはルーラ政権終了時の2026年までに完了し、残りも2027年までに完成見込みだ。この統合により、ブラジル産品がアジア市場に届くまでの距離が約7千キロ減り、輸送時間も20日間短縮される。 特に注目されるルートとしては次の通り。 ▼ブラジル北部ロライマ州ポルト・ベーリョからアクレ州リオ・ブランコを通ってペルーのリマやマタラニ(ペルーの南海岸の主要な港)に抜けるルート。 ▼大農牧地帯であるブラジル北西部マット・グロッソ州からボリビアのプエルト・キハロやラパスを通って、チリ最北部の港湾都市アリカに抜けるルート。 ▼農業地帯のパラナ州フォス・ド・イグアスからパラグアイを通ってチリのイキケやアントファガスタに向けるルート。 ▼ブラジル最南部リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレからウルグアイやアルゼンチンを通って、チリのコキンボまで抜けるルート。