《記者コラム》日本ブラジル新時代のカギはエネルギー保障=大陸横断ルート建設に日本勢も参加を
シンガポールとのFTAで経済障壁を解消
もう一つの「制度的障壁」の解決策と思われるのは、メルコスル・シンガポールFTAの締結だ。本紙23年12月9日付「メルコスル=シンガポールと自由貿易協定」(7)には、《シンガポールはメルコスルの主要輸出先の一つで、重要な投資パートナーでもある。2022年の両者間の輸出額と輸入額の和は約100億ドルだった。ブラジルとの関係だけを見ると、22年の場合、シンガポールは世界で7番目、アジアでは中国に次ぐ第2の主要輸出市場で、約84億ドルを輸出した。投資に関しては、2021年は世界で12位のブラジルへの外国直接投資供給国だった》とある。 EUメルコスル自由貿易協定にはフランスやドイツの強力な反対があり、実現は難しい。どちらも国内農家票は重要であり、それを捨ててまでメルコスルを重視する動機は薄い。だがシンガポールはあれよあれよという間に実現した。 シンガポールは華僑が経済の中心を握る親中国家であり、ここを通して、メルコスルの農産物を中国へと免税で流れ込ませる経済的な仕組みとして機能するのではとの見方もある。 日本メルコスルFTAも以前から散々言われているが一向に進まない。中国勢はその辺を上手に〝こなして〟いる。
ブラジルが中国14億の民の食糧安全保障か
本紙11日付《深セン=ブラジル中国ミーティング開始=14億人の食糧安全保障》(8)で報じたように《カチア・アブレウ上議(進歩党・PP、元農相)は、ブラジルは、14億という人口の需要に対応できずにいる中国の食糧安全保障に協力し、戦略的パートナーとなる用意があると強調。「中国への最大のコモディティ供給国だった米国が貿易戦争で失った空席を、ブラジルが占めることが期待されている」と同上議は語った。物流についても、ブラジル縦断鉄道プロジェクト「フェログロン」(穀物鉄道)実現が、マット・グロッソ州からパラー州への積出し上の問題の解決策となり、欧州やアジア向けの輸出が促進される可能性があると指摘した》(9)と報じた。 中国が食糧供給元を米国からブラジルに乗り換えることは、BRICSという新興国家グループ内の経済活動を活性化するだけでなく、農業大国としての米国に大打撃を与えることにもなる、中国には一石二鳥の政策だ。