便利な「無料AI翻訳」はなぜ仕事で使うとヤバいのか?リスクは入力した情報の二次利用だけではない
自分はたいした情報を扱っているわけではないからと気軽に無料サービスを使っている人も多いかもしれないが、実際には重要な情報を入力してしまっている場合がある。例えばメール文の翻訳は注意が必要だ。同社の2023年調査では、自社名や取引先名、オンライン会議のURLやパスワードなどを含めたままメールの内容を入力してしまっているケースが散見されたという。 「無料サービスを提供する企業が、取得した情報を故意に外部へ漏らすことは決してないでしょう。情報は貴重だからです。もっと言うと、企業の内部ではどのように情報が利用されているのかはわからないということ。サービス提供者は情報を見ようと思えば見ることができ、二次利用のリスクは排除できないのです。そのため、とくに製造業のように世界中が欲しがる機密情報を持っている企業や、そうした企業と取引のある企業は、無料AI翻訳サービスを利用するリスクは非常に高いと言えます」
■83%が無料AI翻訳サービスを使っていた また、二次利用のリスクのほか、AI翻訳では「湧き出し」という問題がある。投入した原文とは無関係の言葉が翻訳結果に表れてくる現象だ。「社内の情報が、誰かの翻訳結果として出てきてしまう可能性がある」と、瀬川氏は警鐘を鳴らす。 こうしたセキュリティリスクがあるにもかかわらず、無料サービスはよく利用されている。同社が従業員500名以上の製造業を対象に行った2023年調査によれば、業務でAI翻訳サービスを利用すると回答した155名のうち83%がデータの二次利用の恐れがある無料サービスを使っていたという。
また、調査対象者が所属する企業の58%が、データが二次利用される可能性があるウェブサービスの利用に関して注意喚起が行われているという結果も出ており、利用に制限があったとしても無料のAI翻訳サービスが多く利用されている状況が浮き彫りになった。 「利用に制限を設けても完全に制限できるわけではありません。個人のスマホからアクセスするなど抜け道はたくさんあります。完全に制限する方法は、セキュアなツールを全員に与えること。安全に使えるものが手元にあれば、わざわざリスクを犯しませんよね。一部の部署にセキュアなツールを渡したところで、効率化はされてもセキュリティリスクは軽減しませんので、組織全体として導入することが重要です」