便利な「無料AI翻訳」はなぜ仕事で使うとヤバいのか?リスクは入力した情報の二次利用だけではない
では、セキュアなツールは、どのように選べばよいのだろうか。 大前提となるのは、有料サービスであること。有料の場合、「ほとんどの企業は情報を二次利用しない。この点は安心していい」と瀬川氏は話す。そのため、機密情報に気を遣いながら入力しなくて済むので生産性が上がるし、とくに専門性が求められる内容については、安全かつ高い精度で利用できるという。 「例えば、契約書などはインターネット上に雛型はあっても実物は見つからないので、AIも学習することができず精度が上がりません。当社の場合、法律事務所と協力体制を取って、固有名詞や特殊条項などには触れないなど一定のルールの下、法務の学習データを集めています。非常に手間がかかるので、お金をいただいているわけです。このようにしっかりとしたセキュリティ対策が取られているのが、有料サービスだと考えてください」
■有料のAIサービスを導入した後も要注意 また、どんなサーバーを使い、どう運用しているかを確認することも重要だ。とくに、利用しているAI翻訳サービスが国外のサーバーを使っているケースや、一部の処理で別会社のシステムを利用している場合などがあり、単純に日本法人だからといって確認を怠ると、守秘義務違反につながるケースもあるという。 「製造業などは軍事転用可能な技術を取り扱うケースもあり、海外のサーバーに置くことを禁じられている情報も少なくありません。取引先の情報を取り扱ううえでも、サーバーについて明らかにしていなかったり、連携している外部システムのセキュリティの確認に手間取ったりするAI翻訳サービス企業もありますので、きちんと確認しましょう」と瀬川氏は助言する。
ただ、求めるセキュリティの度合いは企業ごとに違うので、まずはセキュリティチェックシートなどを使い、導入を検討しているサービスが自社のレギュレーションを達成しているかどうかを確認したい。 「自社のセキュリティに関するレギュレーションを提示してやり取りをしてみて、対応に不満があれば採用しないほうがいいし、リスクが見えたとしてもそのリスクを許容できるなら採用すればいい。このあたりのことは、多くの企業の情報システム部は理解しているはずです」と、瀬川氏は言う。