回復へ科学的資源管理を 漁獲減少続くマガキガイ 報告義務化、小型採捕禁止を提言
鹿児島県の奄美群島でトビンニャやテラダなどと呼ばれて親しまれているマガキガイ。近年漁獲量が減少傾向にあり、群島内の一部漁協では禁漁や禁漁区を設けるなど対策してきたが、漁獲量回復には至っていない。マガキガイの生態に関する知見がなかった奄美群島では2022年から研究が始まっており、研究者は「科学的情報を取り入れた資源管理を」と警鐘を鳴らす。 ■マガキガイの生態 マガキガイに関する専門家の研究報告は22日、奄美市名瀬で開かれた奄美群島漁業振興大会(奄美群島水産振興協議会主催)で行われ、鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の河合渓教授と鹿児島大学水産学部の鳥居享司准教授が、奄美海域におけるマガキガイの生態と漁業実態、資源管理などをテーマに発表した。 河合教授はマガキガイの生態について▽出荷サイズの殻長45ミリに成長するまで2~3年▽十分に成長した個体は殻下部に「ストロンボイドノッチ」(湾入)と呼ばれるくぼみを形成▽推定の繁殖期は12~5月か1~4月▽水温変化や水質悪化で砂に潜る―などの特徴を説明する。 ■漁業実態と管理の現状 奄美群島での主な漁期は12~4月。研究結果から判明した推定の繁殖期と重なる。13年から過去10年間の奄美大島4漁協のマガキガイ漁獲実績は17~19年を境に減少傾向で、特に漁期後半は小型個体が中心だ。その一方で価格は観光客増加に伴う需要増もあってか、10年間で2~3倍に高騰している。 漁獲量低迷を受け、群島内の漁業も独自に資源管理している。19年ごろから漁獲が激減している与論町漁協は21年7月から禁漁の措置を継続。宇検村漁協は10年代に禁漁区を設けた。瀬戸内漁協では業者会を組織し、採捕者を約30人に制限。22年からは正確な漁獲データを得るため、業者会に対して漁協への全量出荷を求めている。 鳥居准教授は奄美群島で正確な漁獲データがない現状について、「正確なデータなしに、資源管理や対策の効果検証はできない」と指摘。現時点でできる漁業者の取り組みとして、漁獲データ報告の義務化や小型個体の採捕禁止を挙げる。