『ノーヴィス』ローレン・ハダウェイ監督 “没頭”が人生に目的を与える【Director’s Interview Vol.448】
デイミアン・チャゼル、クエンティン・タランティーノ、ザック・スナイダー、ギレルモ・デル・トロ等々、ハリウッドの錚々たる監督たちの音響を担当してきたローレン・ハダウェイ。彼女の監督デビュー作『ノーヴィス』は、ボート競技に魅入られた女子大生の情熱と狂気の物語。音響から監督へのキャリアチェンジは珍しく思えるが、そのストイックな内容と画作りは歴代のビジュアリストの系譜に名を連ねることになるだろう。本作は次世代のスター監督の誕生を予感させる秀作となっている。ローレン・ハダウェイ監督はいかにして『ノーヴィス』を作り上げたのか。話を伺った。 『ノーヴィス』あらすじ 大学のボート部に入部したアレックス(イザベル・ファーマン)が、「困難だからこそ挑戦するのだ」J.F.ケネディの言葉を胸に、アレックスは大学女子ボート部の門を叩く。猛烈に練習に励み、スポーツ万能な同期のジェイミーにライバル心を燃やすアレックス。上級生のケガでレギュラーの座がひとつ空いた時、その座を巡って熾烈な争いが繰り広げられる。レギュラー入りで得られる奨学金がどうしても必要なジェイミーは画策に走り、その座を奪取。出し抜かれたアレックスは雪辱を果たそうとするが、その強すぎる執着心は次第に狂気を帯びていく…。
“没頭”が人生に目的を与える
Q:監督自身の学生時代の経験が元になっているとのことですが、なぜそれを映画にしようと思われたのでしょうか。 ハダウェイ:私のキャリアはポストプロダクションで音響をやることから始まり、その次のキャリアで目指したのは、脚本を書いて監督するという小さな頃からの夢でした。最初に作る映画は「自分がよく知っている、自分だけが語れるストーリーを書け」と言われることが多いですよね。だったら、ボートに費やした学生時代の4年間を映画にしようと。その4年間は本当に凄まじい時間だったので、映画にすればものすごいカタルシスになるなと。4年間に起こったことを1年間に圧縮してストーリーを作り上げました。 Q:アレックスの勉強のスタイルを見ると、物事に没頭・執着するのは彼女の気質のようですが、ボート競技自体にもそれだけ惹きつける何かがあるのでしょうか。 ハダウェイ:アレックスも私も何かに没頭して打ち克つことが好きなんです。ボート競技のことは何も知らなかったのですが、皆がやっているからやってみようというノリで始めてみたものの、実際にやってみるととんでもなく大変。それでも、どんどんハマっていき、気づけばほとんど中毒状態に…。このボート競技に打ち克つまでは、例え死んでもやり続けるという気持ちになっていました。アレックスも全く同じですね。 アレックスは、高校時代は勉強にハマり、大学時代はボートにハマり、多分また何かにハマると思います。卓球にハマるかもしれないし、企業のインターンにハマるかもしれない。世界中を旅することだっていい。とにかく彼女はまた何かに没頭すると思います。“没頭する”という行為が彼女に人生の目的を与え、自分自身を燃えさせるのです。 Q:学生時代、ボート以外にハマっていたものはありますか。 ハダウェイ:大学時代はすごく強烈な時間を過ごしました。ビジネスと映画の両方を専攻し、インターンやボランティアもやっていました。もちろんボートをやりながらです。それでも卒業時の成績はクラスでトップでした。今振り返ってみると、その4年間をどうやって生き延びることができたのか不思議でなりません。自分がやると決めたらとことんやる。それが良いか悪いかは分からないし、もしかしたら自己破壊的かもしれません。それでも色んなことに没頭していました。
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