メキシコ・ペソ買いのもうけの戦略、大統領・議会選で一夜にして一変
(ブルームバーグ): 世界の資産運用会社にとって、低金利通貨で資金を借り入れ、メキシコ資産に投資することが過去2年間、同国通貨ペソの上昇を背景に金もうけの常とう手段となってきた。
しかし、これはほぼ一夜にして確実に稼げる手法ではなくなった。
2日に投開票が行われた大統領選で左派与党のクラウディア・シェインバウム氏が地滑り的な勝利を収め、議会選でも与党が一段と勢力を伸ばしたことで、市場に動揺が広がった。この結果、ロペスオブラドール大統領が実現できなかった司法制度改革などをシェインバウム氏が推進することができる可能性が高まった。
NWIマネジメント(ニューヨーク)のハリ・ハリハラン最高投資責任者(CIO)は、「メキシコ・ペソの揺るぎない上昇の局面は恐らく終わった」との見方を示した。
メキシコ・ペソは今週に入り5%下げ、2営業日としては2020年以来の大幅下落率となった。一方、3日に6%余り急落した同国の株価は4日には反発した。
ペソ売りの動きは4日も落ち着く兆しがほとんどなく、ペソの1カ月物インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)の指標は昨年10月以来の高水準に急上昇し、メキシコ資産のリスクプレミアムの突然の上昇につながった。
これは財政の安定と良好な成長見通しを追い風にペソを買うという、先週まで投資家に2桁リターンを提供してきた戦略とは正反対の流れとなる。
ファン・エック・アソシエーツのポートフォリオマネジャーで、メキシコをアンダーウエートとしてきたエリック・ファイン氏(ニューヨーク在勤)は、「これは形勢を一変させる可能性がある」とし、「買いの好機とみる気にはならない」と話した。
ペソ安は最終的に一過性なものにとどまるかもしれないが、政治リスクによって新興市場国投資の戦略が急激にひっくり返る可能性を鮮明に想起させる形となった。
原題:Money-Minting Peso Trade Upended by Mexico’s Election Shock (1)(抜粋)
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Maria Elena Vizcaino, Vinicius Andrade, Michael O'Boyle