JTB 風口悦子氏「顧客起点の文化醸成と、持続可能な成長への挑戦」
2024年のマーケティングおよびメディア業界は、テクノロジーや市場環境の急速な変化を受け、これまでの慣習や枠組みに頼らない柔軟なアプローチが求められるようになった。7月に発表されたChromeにおけるサードパーティCookie廃止の撤回をはじめ、AI活用が実践フェーズに突入したことでデータドリブンな戦略がさらに重要視されるなど、手法が大きな転換期を迎えたことは明らかだ。 こうしたなか、Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2025」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブにアンケートを実施。2024年をどのように総括し、2025年に向けてどのような挑戦と成長のビジョンを描いているのか、その想いに迫った。 株式会社JTBで、執行役員 ブランド・マーケティング・広報担当 CMOを務める風口悦子氏の回答は以下のとおりだ。 ◆ ◆ ◆
──2024年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。
MLBでの大谷選手の活躍やパリオリンピック・パラリンピックなど、スポーツによる感動が多くの人を魅了した2024年、訪日外客数は過去最高を記録し、新たな交流の時代を実感する年となりました。JTBでは4月にコーポレートマーケティング組織を立ち上げ、ブランディング、マーケティング、広報機能を統合し、全社マーケティング機能の再設計を行っています。 当社は「交流創造」を事業ドメインとし、旅で培った知見やネットワークを拡張し、人が交わる新たな事業を推進しておりますが、国内外において地域の課題、企業の課題を解決する新たな交流が、ステークホルダーとの共創の取り組みにより実を結びました。また、サステナビリティやDEIBの領域での活動が認められ、さまざまな認証を獲得しました。このような活動をブランドに蓄積し、広報、マーケティングの力で、さらに拡大してまいります。
──2025年に向けて見えてきた課題は何ですか。
小集団化に対応する高度なパーソナライゼーションに適応しつつ、ボーダーレスな市場環境に適したグローバル戦略が求められています。AIを活用した顧客戦略の高度化と、グローバル各国の文化や慣習、法令に準拠したプライバシー保護を両立する必要があります。加えて、これまで以上にサステナビリティへの取り組みが企業価値とブランド価値の核心となります。取り組みをさらに深化させ、具体的な成果を示すことが重要です。 また、顧客との信頼関係構築が企業の競争力を左右するため、マーケティング施策においても、環境・社会・人権への配慮がますます重要となっています。マーケターに求められる能力としては、お客さま起点の姿勢、テクノロジーへの適応力、データ解釈能力に加え、倫理的判断力を強化することが不可欠だと考えます。