ロシアとトルコ 撃墜事件でよみがえる500年来の対立の歴史
シリア情勢が両国に再びヒビ
この両国関係にヒビを入れたのがシリア情勢です。シリア情勢に関しては、両国は対立関係にあります。ロシアがシリアのアサド政権を支援しているのに対し、トルコは反アサド勢力を支持しているからです。経済的な相互依存関係と外交的な対立関係が併存するという複雑な様相を呈しています。ロシアにとってもトルコにとっても相互依存関係を破壊するような行為は得策ではありません。天然ガスや原油といったエネルギー輸出の停止が含まれない限り、ロシアの制裁は本気ではないわけです。 経済関係の枠組みを壊さない範囲での、シリア情勢をめぐる綱引きが両国間で行われるでしょう。とりあえずは、ロシアはトルコの支援する反アサド勢力への爆撃を強化するという形で今回の撃墜事件に対応すると予想されます。
■高橋和夫(たかはし かずお) 評論家/国際政治学者/放送大学教授(中東研究、国際政治)。大阪外国語大学ペルシャ語科卒。米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『イスラム国の野望』(幻冬舎)など多数