近藤&高藤の銅メダル会場に見えた日本柔道復活の兆し?!
同時に開催された男子60kg級でも金メダルを期待されていた高藤直寿(23、パーク24)が準々決勝で一本負け。順位決定戦を勝ち上がり、近藤に続いて銅メダルを獲得した。 「自分のなかで五輪をすごい怖いものだと作ってしまっていたかなと思います。負けるまでは完璧でした。負けてからはぼろぼろでしたけど……。絶好調で負けたから、言い訳はできないなと思います」(高藤) 試合後、女子の南條充寿監督は「切り込み隊長として最低限の戦いはしてくれました」と近藤の戦いぶりを評価し、男子の井上康生監督は「高藤は私に『金メダルを第1号としてプレゼントする』と言ってくれていました。色は違えども、第1号のメダルを僕自身にプレゼントしてくれたことに対して、誇りに思っております」と労った。 両監督の言葉を聞いて思い出したのは、4年前のロンドン五輪だ。大会初日、女子48kg級の福見友子が5位、男子60kg級の平岡拓晃が銀メダルに終わり、金メダルをひとつも獲得できなかった。その日、当時の篠原信一男子監督と、吉村和郎強化委員長は、表彰式を見ることなく宿舎へ戻り、翌日になってようやく選手に労いの言葉をかけたという。私は両者のこの横暴を問題視して記事にした。 日本の柔道家は、男女ともに金メダルしか目指さない。その気持ちを誰より理解しているはずの指導者こそ、不本意な結果であったとしても選手の健闘を讃え、試合までの過程を誰より労ってあげるべきだ。 女子柔道界のパワハラが問題になるのはこの年の末だが、4年前の柔道界にはオリンピックの現場にさえ、男女の選手に対するパワハラが存在したのである。ロンドンでは男女を通じてわずか1個の金メダルしか獲得できず、柔道母国の威信は失墜した。 4年前の状況からすれば、選手の首脳陣に対する信頼も厚く、両監督を中心にチームとして柔道母国の再建に向かっている。金メダルがゼロのスタートにも、前回ほど悲観する必要はないのではないか。 (文責・柳川悠二/ノンフィクションライター)