「悪化したらまた来てください」の基準とは? 医師が教える救急外来帰宅後の判断
「悪化したら」の基準とは?**
編集部: 「悪化したら」とは、具体的にどんな状態を指すのでしょうか? 髙橋先生: これは文字通り、症状がひどくなったらと考えて良いでしょう。また、救急搬送の時にはみられなかった新しい症状が出現してくることも「悪化」と捉えることができます。 編集部: では「再診」の基準がありましたら教えてください。 髙橋先生: 原則、受診した理由となった症状が、処置を受けた後や薬を飲んだ後でも徐々に強くなる場合は再診を考えましょう。 とくに痛みに関しては、鎮痛剤をつかっても徐々に悪化していく場合は注意が必要ですが、逆に、風邪症状は薬を飲んですぐに症状がなくなるわけではなく、数日間をかけて良くなったり悪くなったりしながら改善していきます。 どの程度の期間であれば自宅で様子を見ていいかの目安を前もって医師に確認しておきましょう。 また、受診時になかったような症状が出る場合も再診が必要なことが多いですね。頭部外傷などの場合、帰宅後に何度も嘔吐したり意識が悪くなったりすることもあります。こちらも、どのような症状が出たらすぐに再診すべきなのかを確認しておきましょう。 編集部: なるほど。それぞれの症状などによって異なるのですね。 髙橋先生: その通りです。各症状や病態によって、受診すべきタイミングや注意すべき点は異なります。例外もありますが、下記を参考にしてみてください。 風邪症状: 喉が痛くて飲み込めない、声が出ない、咳や息苦しさのせいで横になれない おなかの症状: 痛みが鎮痛剤を飲んでも改善しない、何度も吐いて水分も摂れない、便が赤くなる(血便が出る)、高熱が出てくる そのほかの内科的症状: 突発的に生じる痛み、食事や睡眠などができなくなるほど症状が強い、ガタガタ震えてしまうほどの寒気 頭や神経の症状: 突発的に起こる強い頭痛、繰り返して吐いてしまう、意識がおかしい、しゃべれない、左右どちらかの手足の動きがおかしい 子どもや高齢者の症状: いつもと様子が違う、食事や睡眠ができないほどの症状がある 怪我など: 出血が持続し10分程度圧迫しても止まらない、鎮痛剤を飲んでも強い痛みがあり動かすことができない、ほかの場所が痛くなってくる ここでは書ききれない症状に応じた再診の目安はたくさんあります。大事なのは、どのような症状が出た場合に、どのくらい様子を見ても改善しない場合に再診すべきなのかを救急外来で確認しておくことです。 編集部: 普段から、細かなことを把握しておいた方がいいのですね。 髙橋先生: そうしておくと安心ですが、全て把握しておくのは難しいと思います。お勧めは、普段から、かかりつけ医とコミュニケーションを取っておくことです。例えば当院では、風邪や頭部打撲、胃腸炎症状などで受診された場合に「帰宅指示書」という紙をお渡ししています。 受診した時点で、最も想定される病態とそのほかにも考えられる病態、帰宅後に気をつけてほしいこと、次に受診すべき症状やタイミングなどを記載した書類です。 医師から口頭で注意点などを説明されても、痛みがあったり気が動転していたりする中でその内容を覚えておくことは難しいと思います。 帰宅して、自分や家族の症状が少し落ち着いた時でいいので「そういえば」と読み直していただければ、「こんなこと言われたな」と思い出しやすくなると思います。 もちろん、帰宅指示書を用いても医療者の伝えたかった内容を完全に理解することはできませんが、「こんな時はどうすればいいのか」といった不安は少し軽減できるのではないかと思います。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージをお願いします。 髙橋先生: 救急外来はたくさんの患者さんが来ますので、同時並行で複数の患者さんの対応している医師に質問しにくいこともあるかと思います。そんな時は看護師さんに質問してみるとよいかもしれません。 救急外来の看護師さんは、知識も経験も豊富な人が多く、生活上のアドバイスや注意点もたくさん知っています。ぜひ質問してみてください。また、かかりつけ医には、救急外来の医師が知らない「これまでの経過」を知っている強みがあります。 救急外来受診後の再診先として、「かかりつけの先生」も思い浮かべてみてください。必ず頼りになってくれます。