【特集 メルセデス・ベンツが切り拓くハイブリッド新時代の今②CLE 200 クーペ スポーツ】MHEVが求めるのは、絶対性能ではなく毎日が楽しい「ハイスペック」なのかも
まず味わうべきは「FRレイアウトらしさを見せつけるエレガントなフォルム」
しかもフォルムは、FRレイアウトの旨味を活かしたロングボンネット、ショートオーバーハング、そしてロングホイールベースにより実にエレガント。一方、逆スラントしたシャークノーズや大きく張り出したリアフェンダーなどによって、力強さも際立たせられている。いずれにせよ、どの角度から見ても視線を奪うデザインであることは間違いない。 インテリアにも触れないわけにはいかないだろう。ダッシュボードの意匠はCクラスに準ずるが、標準装備のAMGラインにより広範囲がシンセティックレザーの「ARTICO」で覆われるなど質感高く仕立てられている。 ハイバックタイプのフロントシートはCLEクーペ専用。後席に乗り込む際には肩部分にあるレザー製のループを引くことで、イージーエントリー機能を起動できる。この後席も、いざとなれば大人2人が快適に過ごせるスペースを用意しており、やはり十分な容量を持つ荷室ともども、高い実用性に貢献しているのだ。 唯一のラインナップとなるCLE200クーペ スポーツが搭載する直列4気筒2Lターボエンジンは最高出力204ps、最大トルク320Nmを発生する。さらに、マイルドハイブリッド機構のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)による17kW(23ps)/205Nmのモーターアシストが加わる。トランスミッションは9速ATで、駆動するのは後輪である。
島下泰久かく語りき「驚きの力強さを発揮。フットワークも素晴らしい」
走り出すと、スペックから想像する以上の力強い蹴り出しに驚かされた。これはまさにISGのおかげで、電気モーターが瞬時のレスポンスと豊かなトルクによって、速やかにクルマを前に進めてくれるのだ。その先の加速も爽快そのもの。エンジンの吹け上がりが心地良く、低音域やや強めの排気音を伴いながらスポーティかつ上質に速度を高めていく。 その長い歴史において、常に美しい2ドアクーペをラインナップし続けてきたメルセデス・ベンツから登場した最新作がCLEクーペである。従来のEクラス クーペとCクラス クーペが統合された形だが、実はその全長はEクラスクーペよりも長い。 いったん戻したアクセルペダル操作を再度踏み込む時などには、やはりモーターアシストによって鋭い反応が得られる。またアイドリングストップからの再始動にショックが伴わないのもISGのメリット。マイルドハイブリッドとは言え、これだけトルクがあると、恩恵は小さくないのである。 フットワークの質も高い。オプションとなるドライバーズパッケージにより、20インチのタイヤ&ホイールと電子制御ダンピングシステムが装備されていた試乗車は、まず当たりのしなやかな乗り心地で唸らせられた。適度に引き締められてはいるが、ショックの角がきれいに丸められているのだ。 それでいてコーナリングでは、まさに意のまま。基本的に60 km/h以下の低速域では後輪を前輪とは逆位相に、それ以上の速度域では同位相に操舵するリアアクスルステアリングが俊敏なレスポンスと高いスタビリティを両立させていて、クルマとの高い一体感を味わわせてくれるのである。 しかもこのリアアクスルステアリングには、標準でも5.2mの最小回転半径を5.0mまで縮小する効果も担っている。コンパクトカー並みと言っていい取り回しの良さは、日常使いの場面で所作をスマートに魅せてくれるはずだ。 美しいデザインに使い勝手の良さ、そして爽快な走りといった多くの魅力を併せ持ったメルセデス・ベンツCLE200クーペ スポーツは、まさに長年クーペをラインナップし続けてきたブランドだからこそ実現できた1台である。 目の肥えたファンにも、あるいは若いユーザーにも、クーペのある生活の豊かさをこういうクルマでぜひ感じてみてほしい。(文:島下泰久/写真:永元秀和)