極寒地のノルウェー、2024年の新車販売台数の89%がEVに
記事のポイント①EVの普及が進むノルウェーは2024年、新車販売台数の約9割がEVとなった②長年にわたり一貫したEV普及施策を推進してきたことが背景にある③「2025年には新車販売の100%をEVにする」との同国の目標達成も現実味を帯びてきた
日本では「極寒の地にEVは危険だ」と言われるが、日本より寒いノルウェーでEVが急速に普及している。ノルウェーの2024年新車販売台数のうち、89%がEVとなり、前年の82%から比率を伸ばした。ガソリン車やディーゼル車に対する高い税金や、EV用の急速充電器など、長年にわたるEV普及施策が奏功した。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
ノルウェー道路連盟(OFV)は1月2日、同国が2024年に販売した新車のうち、EV比率が89%だったと発表した。2023年の82%から、さらに比率を伸ばした。 2024年12月末現在、ノルウェーを走るクルマは、EV車が全車両の28%とガソリン車を上回った。販売が好調なブランドは順に、テスラ、フォルクスワーゲン、トヨタと続き、中国製EVも新車販売台数の10%程度を占めた。 なお、ガソリン車は、EVになじみのない観光客用にレンタカー会社が主として購入した。 同国では、EVの輸入税や付加価値税の免除といった優遇措置のかたわら、ガソリン車やディーゼル車に対しては高い税金を課すなど、長年にわたり一貫したEV普及施策を推進してきた。従来のガソリンスタンドも、EV用の急速充電器を設置するなどして柔軟に適応しており、同国の掲げる目標「2025年の新車販売台数におけるEV比率100%」にさらに近づいた。 ノルウェーEV協会のクリスティーナ・ブー代表は、「ノルウェーは、新車市場からガソリン車とディーゼルエンジン車を駆逐する世界初の国になるだろう」とコメントした。同国でのEVの普及拡大については、「人は指図されることを好まない。禁止するのではなく、インセンティブを与えたことが奏功した」と評価した。 ノルウェーは国内で自動車を生産せず、すべて海外から輸入する。そのため、国内に自動車業界団体によるロビー活動がないことも、同国がEV推進政策を実行しやすい要因だとの見方もある。 EVは一般的に寒冷地で避けられる傾向にある。過度な寒さがバッテリーに負荷をかけ、航続距離に影響を与えるからだ。ノルウェー自動車連盟(NAF)によると、航続距離への影響は車種や搭載機能によって異なるという。 NAFは2022年、EVの31モデルで寒冷環境下の性能をテストした。その結果、最も航続距離を維持したのは中国「BYD Tang」で、11%の低下だった。31モデルの平均としては、20%近く低下した。今回のテストでは使用されなかったが、ノルウェーで販売されるEVの一部は、ヒートポンプやバッテリー絶縁、予熱機能といった冬季向けの装備を備えているという。 ノルウェーがEV普及を進める背景には、「低炭素社会(ロー・エミッション・ソサイエティ)」への移行がある。同国は、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量55%以上減(90年比)、2050年までにGHG排出量90~95%削減(90年比)を目指す。ノルウェーは石油やガスの輸出大国だが、自国の電力はほぼ再生可能エネルギーでまかなっている。 国際エネルギー機関(IEA)のレポート(2020年)によると、発電量の98%を再生可能エネルギーが占め、そのうち水力発電が92%だ。建設部門と産業のほぼ半分がすでに電化しているという。