「14歳の娘の胸に銃口をあて、引き金を引いた」米国が衝撃を受けた銃乱射事件、17人も殺害した男は死刑を免れた 遺族が語るアメリカの死刑制度(後編)
アメリカ・フロリダ州マイアミから北に約60キロ。パークランドは、マイアミの賑やかさとは打って変わって、落ち着いた雰囲気のある地域だ。 この街に住むトニー・モンタルトさんは2018年2月14日のバレンタインデーの朝、娘ジーナさん=当時(14)=にカードとチョコレートを渡し、いつものように「愛している」と抱きしめてから学校に送り出した。娘との最後の会話になるとは、想像もしていなかった。 その日、モンタルトさん宅から2キロ弱離れたマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で銃乱射事件が発生。ジーナさんを含め17人が死亡した。(共同通信=今村未生) ▽犯人は母校を退学した男 事件が起きた時、モンタルトさんと妻は自宅にいた。学校で何かが起きたと聞いて妻は学校に様子を見に行き、モンタルトさんは子供たちが帰宅するかもしれないので、家で待機していた。 そんな中、ジーナさんに似た子が病院に運ばれたとの一報が入る。モンタルトさんは病院へ向かい、ジーナさんが殺害されたことを知った。ショックで倒れそうになったが、なんとか家に帰りついた。ジーナさんの2つ下の弟に、姉の死を伝えなくてはならなかったためだ。
「ジーナは最初の子で、私たち夫婦を親にしてくれた子だ。私たちはただただ毎日、娘を恋しく思っている」。ジーナさんは勉強熱心で、ガールスカウトなどの活動にも熱心に取り組む子だった。 逮捕されたのはニコラス・クルーズ受刑者(24)。この高校を2017年に退学になっていた。 クルーズ受刑者は2021年10月、州地裁の審理で起訴内容を認めた。つまり、自身が有罪であることを認めた。アメリカでは、有罪かどうかを決めた後に量刑について審理する。その量刑を決める公判が始まったのは2022年7月だった。 ▽「矯正システムのブラックホールに消えてほしい」 モンタルトさんは、公判を何度も傍聴した。 「犯人と同じ部屋にいるのは苦しかった。だが、私たち夫婦は、ジーナのことを語れる唯一の存在であり、法廷にいるということがとても重要だと思った。学校に乗り込み、生徒を襲って殺すという国の未来を攻撃するような人物を許してはいけないと思う。法律が最大限に適用されることを望まないわけがない」