【GQ読書案内】職人と手仕事を考える──アルチザンにまつわる6冊
作家と職人の二人三脚
柚木沙弥郎『柚木沙弥郎 美しい本の仕事』(編著=小林真理、パイ インターナショナル) 最後に紹介するのは、型染染色作家で美術家の柚木沙弥郎さんの「本」にまつわる仕事に注目した作品集だ。柚木さんは今年1月に逝去されたが、100歳を超えてもなお創作を続け、国内外で数多くの展覧会を開催してきた。柚木さんが手がけた愛らしく豊かで鮮やかな色彩の図案や水彩画を使って生み出された書籍の装幀や絵本、ポスター、イラストレーションが多数紹介される。 柚木さんは、柳宗悦さんの「民藝」と芹沢銈介さんの型染カレンダーとの出会いから染色の道に進む。柚木さんが、芹沢さんという師匠に弟子入りしたものの、「作家のところにいるよりも、職人のところへ行って勉強してきたほうが良い」と、静岡の染物屋を紹介され、そこで職人とは何をしている人たちなのかを学んだ、というのは有名な話だ。 その後はご存知の通り、型染という技法による染布や染絵の作品を数多く制作した。作家としてデザインと型紙の制作は自身が担い、専任の染め職人が色をつけていく。柚木作品は、自分と職人と二人三脚で協働することで生み出されたし、そして柚木さんもまた、型紙を手仕事によって生み出す職人でもあったのだ。
贄川 雪(にえかわ ゆき) 編集者。本屋plateau booksの選書と企画担当、ときどき店番。 本屋plateau books(プラトーブックス) 建築事務所「東京建築PLUS」が週末のみ営む本屋。70年代から精肉店として使われていた空間を自らリノベーションし、2019年3月にオープン。ドリップコーヒーを味わいながら、本を読むことができる。 所在地:東京都文京区白山5-1-15 ラークヒルズ文京白山2階(都営三田線白山駅 A1出口より徒歩5分) 営業日:土・日・祝祭日 12:00-18:00 WEB:https://plateau-books.com/ SNS:@plateau_books 編集・神谷 晃(GQ)