急展開する北海道流通業界 イトーヨーカ堂・西友相次ぎ撤退、道外小売業の参入も活発化
2024年に入ってから北海道小売の再編が加速している。イトーヨーカ堂と西友の相次ぐ撤退で道内流通業界は節目にある。OICグループのロピアが道内初進出、トライアルカンパニーや業務スーパーなどディスカウントストアの多店化が進み、アークス、イオン、コープさっぽろの3強路線に影響を与えそうだ。道内食品界では「さらに寡占化が進み、それぞれの顧客ニーズを深耕する必要がある」「価格訴求型企業に対する距離感を、どう対応するか」などの課題を上げるメーカーもあり、急展開する道内流通再編に関心が高まっている。 経営効率化のためイトーヨーカ堂の店舗譲渡や西友の事業承継が全国規模で進む中、北海道でも地域に強い小売業の存在感が増している。一方で、ディスカウントストア(DS)やドラッグストア(DgS)が新規参入のチャンスをうかがう。 イオン北海道は西友が札幌市内に展開する9店舗のGMSを170億円で取得し、10月以降に店名をイオングループに変更する見込み。承継する部門の経営成績(22年12月期)は約260億円。中期経営計画(21年~25年)で直営売上高3800億円を掲げ、食品売上高では道内ナンバーワンの3000億円を視野に入れる。北海道発のDgSツルハHDはイオンの連結子会社ウエルシアHDと経営統合する。 イトーヨーカ堂は道内全6店撤退。札幌市内にある屯田店、琴似店、福住店の3店はロピアが引き継ぐ。また地場スーパーのダイイチが6月末に閉店する帯広店、来年1月ごろにアリオ札幌の食料品売場を引き継ぐ見込み。 こうした動きに3強の一角アークスは横山清会長CEO、猫宮一久社長COOの新体制がスタート。猫宮新社長は「スピードを上げて強いスーパーマーケットグループにしていきたい」と急展開する流通再編へ迅速な対応で乗り切る構え。 コープさっぽろは20年、サツドラHD、加藤産業とで仕入れ集約による流通コスト削減などを目的として新会社「北海道MD機構」を設立。このほか、地場スーパーの北雄ラッキーが8月にも「スーパーくまがい」を運営する熊谷商店(胆振管内白老町)からスーパー事業を譲り受ける。 激化する流通再編を道内企業はどう見ているか。地元メーカーからは「1強状態になると地場企業の衰退につながる」と先行きを不安視する声があったほか、卸からは「オーバーストアに変わりはなく、ますます競合が激しくなる」「販売するパイが少なく限られて苦戦を予想」と懸念する声が寄せられた。半面で「3強体制に割って入る企業の参入は良いこと」と肯定的なコメントも聞かれる。 物流2024年問題や人口減少で過疎化が進む地方エリア対策などの課題を抱える中で、小売グループの先行きに関心が高まる。
日本食糧新聞社