ナッツリターン問題で批判集まる「韓国財閥」の強さと弱さ 慶應義塾大学教授・柳町功
サムスンと現代、巨大2財閥で経済を牽引
韓国政府(公正取引委員会)は毎年4月、各種の法的規制対象となる大規模企業集団指定を発表する。2014年4月、民間からは49のグループが指定を受けたが、上位(1~4位)、中位(5~10位)、下位(11~30位)間の規模の格差が著しい。上位にはサムスン(系列74社/資産331兆ウォン)、現代自動車(同57社/180兆ウォン)、SK(同80社/145兆ウォン)、LG(同61社/102兆ウォン)が位置し、韓進(同48社/39兆ウォン)は10位である。グループ規模で見る限り、サムスンと現代自動車の巨大2グループが他に大きく水をあけている。 2014年8月に韓国取引所が発表した時価総額データを見てみよう。株式市場全体の時価総額1,563.8兆ウォンに対し、上記10大グループ合計で727.0兆ウォン(全体の53.3%)であった。サムスン307.6兆ウォン、現代自動車151.6兆ウォン、SK89.8兆ウォン、LG77.0兆ウォンであったが、サムスンだけで10大グループの42.3%、韓国全体の22.6%を占めたことになる。 個別企業レベルでは、時価総額上位10社の中にサムスングループからはサムスン電子178,2兆ウォン(1位)、サムスンSDS30.7兆(4位)、サムスン生命23.9兆ウォン(8位)の3社、現代自動車グループからは現代自動車36.8兆ウォン(2位)と現代モービス22.9兆ウォン(10位)の2社がそれぞれ登場している。韓国経済はこれら巨大2グループによって牽引されていると言っても過言ではない。
2世代、3世代目のオーナー経営
しかし財閥の及ぼす社会的影響力という点では、経済指標が示す以上の重大さが感じられる。大韓航空を保有する韓進グループは資産規模10位の中位財閥であるが、3世代目の若きオーナー経営者の引き起こした不祥事という点では多くの財閥に共通して発生しうる問題だからである。韓国財閥のオーナー経営とはどのようなものだろうか。 創業家の2世代目、3世代目たちは、世代交代に伴い所有・経営両面における継承を経てグループ会長などの地位に就き、オーナー経営者としての役割を実行してきた。一方、経営規模の巨大化、内外の経営環境の複雑化は優秀な専門経営者を必要とし、強力な経営者組織を形成した。オーナー経営者が高い能力を持つ場合、サラリーマン経営者では到底不可能な迅速かつリスキーな意思決定を断行するなど、積極的な経営を実現し急成長を導いた。