中国がサウジアラビアに「急接近」…両国に共通する「危機感の正体」
中東と中国、それぞれの思惑
最近、中国はサウジアラビアなど中東諸国との関係強化を積極化している。5月29日、サウジアラビアの政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド、SWF)は、パソコン世界最大手の聯想集団(レノボ・グループ)との戦略提携を発表した。 【写真】中国の「麻薬犯罪」を暴露した米下院報告書がヤバすぎる…! レノボは、サウジの政府系ファンドの傘下の投資会社に20億ドル(約3100億円)の転換社債を発行するという。 今回の連携の背景には、中国とサウジアラビア双方の利害がある。中国は過剰生産能力の輸出先や先端技術のシェア拡大を目指して、中東湾岸諸国への進出を一段と重視している。 一方、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などは、脱原油・脱炭素の対応に迫られている。特に、サウジアラビアは石油依存の低下で、低コストの脱炭素、デジタル関連機器の調達を増やそうと画策中だ。
警戒する米国
それに対して、米国は中国と中東諸国の接近に警戒を強めている。5月下旬、米国政府は、エヌビディアやAMDのAIチップの中東向け輸出を止めたとの報道があった。 米国は、第三国も巻き込んだ中国への半導体、AI分野の技術漏出を阻止しようとする。こうした米中の抗争が中東・湾岸地域にも及んでいることは、今後の世界情勢にとって不透明要因の増加になることが懸念される。 近年、サウジアラビアなど中東諸侯は、経済の石油依存の引き下げのため再生エネルギーなどの利用を強化した。 2020年、UAEではフランス電力公社(EDF)と、中国の太陽光パネル大手ジンコ・ソーラー・ホールディングの合弁企業が世界最大・最安(当時)の太陽光発電所を稼働すると報じられた。 また、2023年にはサウジアラビアが計画する初の原子力発電所建設入札に、中国核工業集団(CNNC)が参加。これまでサウジアラビアは、ITなど先端分野で基本的には米国との連携を強化する方針を示してきた。 ただ、ここへ来て状況は変わりつつあるようだ。5月29日、同国の政府系投資会社によるレノボ出資はそれを示唆する。