ボルボ「V40」の新エンジンに見る未来戦略 モノづくりニッポンへの重大なヒント
ボルボのラインナップ中、最も小さいクルマ、V40のエンジン/ミッションが刷新された。現象としては1台のクルマのマイナーチェンジだが、実はその背景に開発生産システムのグランドデザインの革新がある。エンジン生産の新しい考え方は、自動車産業の行く先を指し示すだけでなく、モノづくりニッポンにとって大きなヒントになる可能性がある。 ボルボV40の試乗会で、筆者はそんなことを考えた。例によって長い話になるだろうが、自動車業界と経済の行方に興味のある方にとって多少の役に立つ話になればいいと思って書いている。
V40の何が変わったのか?
今回試乗したクルマは、ボルボV40 T5 R-DESIGNだ。V40の中では最もスポーティーなモデルとなる。競合はゴルフGTIだと言えば解る人には解るはず。 そもそもV40 はゴルフと同じCセグメントに属するハッチバック。日本ならプリウスがほぼ席巻してしまったクラスで、古くはカローラ、サニー、シビック、ファミリアが属していた。 世界的に見ればゴルフが作ったクラスで、ベンツならAクラス、BMWなら1シリーズ、アウディならA3というあたりがメジャーどころになるだろう。4人乗車に必要十分だが、4人乗車が頻繁では無いというニーズに応えるセグメントだ。V40は今回のマイナーチェンジ前から、このクラスではゴルフと並んでお勧め銘柄の1台だ。 さて今回のマイナーチェンジで何か変わったのかと言えば、エンジンとトランスミッションだ。ボルボにとってある種トレードマークだった5気筒エンジンに代わり、デンソー製の超高圧インジェクターを備えた新開発のストイキ直噴4気筒エンジンを搭載したのだ。この新型のエンジン/ミッションにより、馬力を15%、トルクを17%向上させながら、燃費を14%改善した。 それだけ効率改善が図られたとなれば、シリンダー直噴による吸気冷却効果でさぞや圧縮比を上げたのだろうと思って聞いてみると、それほどでもない。旧型で10.5だった圧縮比は新型でも10.8にしかなっていない。 技術担当の人に聞いてみると、性能向上は徹底したフリクション低減によるものだそうだ。シリンダー1本分減った、つまりレスシリンダーの効果はそれだけ大きいことになる。もちろんトランスミッションの能力向上も大きく寄与しているだろう。従来のトルコン6段から8段に変わり、トルコンの宿命とも言える滑りロスへの対策としてロックアップ領域を広げて効率を上げた。手堅い設計で文句のつけようが無い。