調査終了も真実は依然闇の中。FIAとF1、女性従業員への不適切行為疑惑向けられるレッドブルF1代表について協議へ
女性従業員に対して不適切行為があったという疑惑が向けられているレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表をめぐり、2024年シーズンのF1開幕戦が開かれているバーレーンでFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長とF1のステファノ・ドメニカリCEOが、今後の対応について話し合うために会談を行なうようだ。 【ギャラリー】正常進化? いやいや過激なデザインも各所に! 連覇狙うレッドブルが新車『RB20』を発表 ホーナー代表の不適切行為疑惑に関しては、チームの親会社であるレッドブル社によって8週間にわたる独自調査が行なわれ、2月28日(水)夕方、独立した法廷弁護士のまとめた報告書の中で申し立てが棄却されたことが明かされた。 しかしそのわずか24時間後、チーム代表やメディアを含むF1関係者に匿名アドレスからEメールが送られ、ホーナー代表の調査における証拠とみられるモノが併せて送付された。 レッドブル社から、この送信された書類の信憑性についての指摘はなく、ファイルの一部がホーナー代表の信用を失墜させるために捏造された可能性もゼロではない。申し立てをめぐる状況は依然として極秘事項であり、チームもホーナー代表本人も証拠らしきモノに関していかなるコメントもすることができない。 ホーナー代表の一件は現時点でレッドブル社内の問題である一方、コース内での争いから離れたところで外部の注目を集めていることから、FIAやF1の商業権を司るフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)が介入する必要があるのかどうかという疑問の声も挙がっている。 FOMは競技者に対する直接的な規制権限を持っている訳ではないが、彼らの関心事は、世界中のニュースの見出しを飾るような出来事によってF1のイメージが損なわれないようにすることにある。FIAもまた、この問題がF1の評判に傷をつけないようにすることに関心を持っている。 匿名アドレスから送られたEメールの受信者にはFOMとFIAの両方が含まれており、FIAは今回の出来事を踏まえて次なるステップを検討していると見られている。そのためドメニカリCEOとの話し合いを経て、FIAがホーナー代表の疑惑をめぐり何らかの措置を講じる可能性がある。 ベン・スレイエム会長とドメニカリCEOのふたりはF1の週末に定期的に会合を開き、グランプリにおける最新情報について話し合っているが、情報筋によるとホーナー代表の一件はバーレーンGPの2日目に予定されている話し合いの一部を占めることになるようだ。 介入が必要だと判断された場合にFIAが取りうる選択肢は沢山あるが、チームメンバー個人の問題であり、他の競技者に影響を与えるモノでもないため、事態の収拾をレッドブル社に委ねるべきだという判断になる可能性もあるだろう。 また今こそレッドブル側がこの問題を深く理解する時だと考え、厳格な守秘義務のもと、FIAが調査結果に関する最終報告書へアクセスすることを要求し、全てが問題ないことを確認するという選択肢も採ることができる。ただ機密事項が含まれていることから、レッドブル社が報告書の提出を強制されるとは限らない。 もうひとつ考えられる選択肢は、FIAが倫理・コンプライアンス部門にレギュレーション違反の有無を調査させることだ。 FIA国際モータースポーツ競技規則第12条2項1.cには、競技者が「競技の公正または自動車スポーツの利益を阻害する性質を有する詐欺行為または不正行為」を犯した場合、FIAは違反とみなすことができると記されている。 また第12条2項2.fには別の規則として、「FIA、FIAの組織、FIAのメンバー、またはFIAの執行役員に対する、さらに一般的にはモータースポーツの利益やFIAが擁護する価値観に対して、誹謗中傷や損失を引き起こす、いかなる言葉、行為または記述」を違反とする可能性があるとしている。 またレッドブル社がこの件に関してFIAの協力を拒んだり、書類の提出を拒否したりした場合にも、問題が泥沼化する可能性があるということも興味深い。第12条2項2.gには「調査における、いかなる協力の不履行」が発生した場合にも違反とみなされると記されているのだ。 FIAの調査が行なわれれば、ライバルチームの代表陣が求めてきた、ホーナー代表の疑惑をめぐり舞台裏で実際に何が起きていたのかについて透明性がもたらされるだろう。 バーレーンGP初日に、メルセデスF1のトト・ウルフ代表は次のように語った。 「こうした重要なテーマについて、グローバルなスポーツとしてやっていくには、さらなる透明性が求められると思う。そして、このスポーツの立場はどうだろうか?」
Jonathan Noble