自動車技術者の年収「日米で最大6倍差」ある真因、トヨタの899万円が高いと思ったら大間違い
アメリカで実用段階になっている自動運転技術が、日本では利用できない。それは、日本に高度な技術者がいないからだ。これは、日米技術者の給与を比較してみると、確かめられる。 日本の自動車メーカーを動かしているのは、高度な技術者というよりは、熟練工だ。日本では、学歴の差にこだわるのに、新技術を開発できるような学力の差を問題としていない。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第130回。
■AIにおける「日米格差」は著しい 日本では、運転手不足のため路線バスの減便が余儀なくされ、タクシーにも乗れず、多数の交通難民が発生している。しかし、アメリカでは、AIが運転する完全自動運転タクシーがすでに利用されている。前回の本欄で、このように述べた。 アメリカでは、運転手不足問題を、AIという強力な技術が解決してくれる。ところが、日本で運転手不足を解消しようとしても、残念ながら、自動タクシーを導入することができない。必要な技術を保有していないからだ。
AI分野における日米間技術格差は著しい。それが、日常生活においてもこのような差を生むに至っている。 では、アメリカでは自動運転が可能になっているのに、なぜ日本では利用できないのか? それは、自動運転技術を開発するだけの高い能力を持つ技術者が、アメリカにはいるが、日本にはいないからだ。 自動運転を開発できるだけの技術をもった者が、アメリカにいて日本にいないことは、日米技術者の給与を比較すると、よくわかる。
トヨタ自動車の従業員の平均年収は、899万円だ(Yahoo! Financeによる)。 アメリカではどうか? 転職情報サイトlevels.fyiのデータによれば、ソフトウエア・エンジニアの年収(円換算値)は、次のとおりだ(基本給の他、ボーナス、ストックオプションなどを含む)。 ウェイモ(サンフランシスコの無人タクシーを開発・運用している企業)のL5(5段階のうち、下から3番目のランク)の年収は、5795万円だ。