自動車技術者の年収「日米で最大6倍差」ある真因、トヨタの899万円が高いと思ったら大間違い
テスラについてみると、P3(6段階の下から3番目のランク)の年収が2997万円となっている。 ■日米の技術職の給与差は3~6倍程度 以上のデータから、大雑把に言えば、アメリカのハイテク自動車会社の技術者の給与は、日本の3倍から6倍程度と考えてよいだろう。きわめて大きな差だ。 日本の場合の平均賃金を決めているのが主として工場労働者であるのに対して、上で見たのは、技術開発を行っているエンジニアであるから、対象となっている人材の質が異なり、そのために、差が生じるのだ。
つまり、企業の中でどのような従業員が支配的かという構造が、日米間で違うのだ。ウェイモやテスラの場合に付加価値を生みだしているのは、工場労働者というよりは、新しい技術を開発している技術者なのである。 そして、アメリカのハイテク自動車メーカーで自動運転技術を開発しているレベルの技術者が、日本のメーカーにはいない(少なくとも、支配的な存在ではない)。 日本の自動車メーカーは、すでに確立された技術を用いて、これまでと基本的には同じ構造の自動車を生産している。それに対して、テスラやウェイモは、新しく開発した技術を用いて、これまでとはまったく違う構造の自動車を生産している。本稿の冒頭で述べたこと(アメリカでは自動運転車が利用できるが、日本では利用できない)は、まさにこの違いによって生じているのである。
■高度技術者が日本にいない2つの原因 では、自動運転を開発できる高度エンジニアが、アメリカにいて、日本にいないのはなぜか? 原因は2つある。 第1は、大学など高等教育機関の問題だ。アメリカでは、AIは重要な教育・研究分野であり、大学の中で大きな比重を占めている。そして、潤沢な教育・研究費を使って、高度なAIエンジニアを育成している。 それに対して、日本の大学では、AIや情報処理技術は、名目的には教育・研究分野になってはいるが、人員も予算も不十分だ。日本の工学部は、いまになっても、ものづくり中心の製造業を支える人材を育成し続けているのである。その反面で、AIや情報関連の高度エンジニアを育成していない。