勝敗を分ける250万のムスリム票の行方、激戦州ミシガンには「8万2000人以上のレバノン系米国人」
パレスチナにおける大量虐殺はアキレス腱
ちなみにヒズボラはイランを後ろ盾とする強力な民兵組織だが、その最高指導者ハッサン・ナスララは去る9月27日にイスラエルの空爆によって殺害され、これを機に中東の戦火はさらに拡大した。 民主党には「一貫性がない」とダバジャは見る。 「バイデンやハリス、そして民主党の人たちに言いたい。あなた方の政策、とりわけパレスチナとレバノンにおける大量虐殺(の黙認)はアキレス腱であり、イスラエル支持を続ければ続けるほど、民主党にとってもアメリカにとっても危険なことになるのだと」 ダバジャもまた、緑の党のスタインに投票するつもりだ。そしてイスラエル支持を続ければ国際社会におけるアメリカの地位に傷が付き、ひいては安全保障上のリスクにもつながると警告した。 「あの頃は人間性が欠けていたと歴史の本に記されるような事態を、いま私たちは目にしている。実際、今の私たちはアメリカ社会の一員だと感じられない。人間としての存在を奪われ、認知されていない」 全米のムスリム有権者を対象とした世論調査を見ると、ハリスとスタインの支持率はほぼ互角の29%で、トランプは11%。ただし16.5%は未定と答えている。 スタインは「ガザの大虐殺」を終わらせると公約しており、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシンの3州にいるムスリム有権者の間ではハリスよりも高い支持率を誇る。ただしジョージア州とペンシルベニア州のムスリム社会では、ハリス支持がスタイン支持を上回っている。
ユダヤ人の71%がハリス支持で、トランプ支持は26%
ムスリムには評判の悪いハリスだが、ユダヤ人社会からは全国的に強い支持を得ている。全米ユダヤ人民主会議(JDCA)による最近の調査では71%がハリス支持で、トランプ支持は26%にすぎなかった。 ちなみにバイデンは前回の大統領選でユダヤ人票の69%を集めたが、30%はトランプを選んでいた。微妙な違いだが、大統領選の勝敗を左右する激戦州では無視できない。 前回、トランプが7万4000票差で勝利したノースカロライナ州には、ムスリム有権者が少なくとも5万4000人、ユダヤ系有権者は推定で5万人いる。州全体ではトランプがやや優勢だ。 【複雑なユダヤ系有権者の内情】 ペンシルベニア州では4年前、バイデンがムスリム有権者のおよそ半数に当たる8万1000票を獲得し、勝利した。同州にはユダヤ系有権者も多く、約30万人はいる。 またJDCAが「投票に当たって最も重視する問題」を尋ねた全国規模の調査では、ユダヤ系有権者の半数近くがイスラエルよりも「民主主義の将来」を重視すると答えていた。JDCAが用意した11項目中、イスラエルは9位に沈み、人工妊娠中絶が2位、経済が3位だった。 アトランタ在住でユダヤ教徒のエスター・グラフラドフォードは、前回はバイデンに投票したし、今回も絶対にハリスに投票すると語った。検察官出身という経歴がいいし、現下のガザ戦争に関する発言も納得できるからだ。